ぼくの部屋のおしいれに、いつだっているあいつ。だから、寝る前に戸が開いていたら、ぼくは決まってちゃんと戸締まりをする。戸は閉めたものの、それでもちょっぴり怖いな。ベッドに入って、ちらりとおしいれの方をのぞく……。
闇への恐怖という子供の心理をユーモラスに描いた作品。本作品の「おしいれ」とは、洋服や靴・帽子、おもちゃなどをしまう「クローゼット(衣装部屋)」のこと。おしいれの闇からおばけが出てきそう……という不気味な気配は、薄暗い印象の3色使いのイラストからたっぷりと伝わってきます。おばけの出現を心配する男の子の対処ぶりは、多くの子供たちが共感するところでしょう。細かなペン画のイラストには写実性があり、男の子やおばけの顔は迫真の表情です。怖いもの見たさの心理で読み進めていくと、後半、意外な展開が待ち受けます。 ――(ブラウンあすか)
ぼくは暗やみが苦手。とくにおしいれの暗やみには、おばけがひそんでいるんだもの。夜になると、あいつは出てきて…。
押し入れ(クローゼット)の暗がりは子供にとって恐怖や不安の対象。そういえばわたしも子供の頃、暗い所、暗闇、夜……におびえていました。この絵本はそんな子供の心理を描いています。お話は男の子が夜、押し入れに隠れている(と思い込んでいる)おばけを退治しようとして、結局はおばけと友だちになってしまうというもの。
線描画のおばけ、男の子の表情がちょっと子供にはリアルすぎて恐怖心を与えるのでは……という心配をよそに、この作品、あっという間に娘のお気に入りになりました。きっと怖いもの見たさの好奇心をくすぐる、刺激的な作品なのだと思います。夜ベッドで何度も「読んで」とせがまれます。しまいにはどうも夢にも出てきたようで(怖い夢ではなく)、夜中に寝ぼけて「ママ、読んでー」と懇願されてしまいました。
息子はセンダックの「かいじゅうたち…」の本みたいだと言っていましたが、絵の描写はこっちの方がリアル。怖がる子供がいても不思議ではありません。でも、その分刺激は強いようです。最後のページが特に。米国でも古典に入りかけている作品なので、この「刺激」が子供たちに長く読み継がれている秘密なのでしょうか。「闇に対する恐怖」という普遍のテーマを取り扱っていることもあるかもしれませんが。
娘は「それでも、ちょっぴり怖くって」「でもでもやっぱり、怖くって」と口語の調子を気に入っているようで繰り返し唱えています。思いがけない人気作となりました。 (ムースさん 30代・ママ 男の子8歳、女の子3歳)
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