忙しい一日を終えたお父さんが家に帰ると、家の中は大さわぎ! いぬは、ねこをおいまわし、4人のきょうだいは大げんか。「いったい、だれをしかっていいのやら……」と途方にくれるお母さん。
「わたしは、わるくない!」と、いちばん上のおねえちゃんのドラ。 「ちがう! ぼくのせいじゃない」と弟のフランク。 「あたしのせいじゃない」と妹のエミリー。
つぎつぎに自分のせいじゃない! といいわけする子どもたち。 一方、いぬのボンゾーとねこのプッスはいいわけができません。
結局すえっ子のミーナの言い分から、もめごとのはじまりはねこのプッスということに。そのプッスが向かったのは、ねずみのところ。「もとはといえば、おまえがわるいんだよ!」とねずみに襲いかかろうとするプッスに対して、ねずみは意外な行動をとって……。ここからお話は意外な方向へ展開していきます。
ひとつの「たね」からどんどんもめごとが繋がっていくさまと、その逆が起こっていくさまを同時に目のあたりにできるところが、このお話の面白さ。とくにドタバタのケンカ劇が修復していくさまには、しっかりと心に残るメッセージがあります。子どもたちにとっても大人にとってもどこか身に覚えのある身近な日常の光景だからこそ、より心に響いてくるものがあることでしょう。
『おやすみなさいフランシス』でおなじみのラッセル・ホーバンさんが描く、ユーモラスながらも心に残る温かい家族のお話。小宮由さんの生き生きとした会話で進む語り口は、子どもたちに読んであげるのにもぴったり。登場人物のセリフの口調の違いからそれぞれの性格もよく伝わります。挿絵を描かれているのは、小学校の国語の教科書の表紙画なども手がけられている大野八生さん。けんかというテーマを和らげる、大野さんの明るくコミカルな絵は親しみやすいですね。中でも特にいいなと思った挿絵は、「けんかのたね」がどんどん繋がっていく様子がひと目で分かる表紙と、ねずみが丁寧に暮らしていることが伝わる壁の中のねずみの住まいの様子の絵。ぜひお話と一緒に楽しい挿絵の細部も楽しんでみて下さいね。
小学1年生ぐらいから大人の方まで、幅広い年齢の方におすすめしたい絵童話です。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
ある日の夕方、家の中は大さわぎ。いぬは、ねこをおいまわし、4人きょうだいは大げんか。わけをきいても、口ぐちに、自分のせいじゃない!というばかり。いったい、なにがあったの? 仲なおりできるの? いいわけをする子どもたちと、いいわけのできないいぬとねこ、そして、いいわけをしなかったねずみの、たのしい絵童話。
「けんかのたね」というタイトルから、その原因を辿る物語と推察します。
けんかの原因には、偶然であったり、故意であったり、時には誤解から生まれることもあるのでしょう。
けんかには対人関係が背景にあって、受けとり方によっては、悲惨なループを辿ることもあるのでしょう。
どんどん負の連鎖を続けることもあるのでしょう。
けんかを終わらせた後に残るのは何でしょうか。
冷静に考え、相手の気持になること、冷静に考えること、謝罪することがなければ、忘れることができなきれば、記憶の引き出しに貯められていくのでしょう。
このお話は、見方を変えることでわだかまりをなくしたというホームコメディーです。
冷静に考えることによって、丸くおさまった、理想的な仲直りです。
他人事としてではなく、自分事にできたら素晴らしいと思いました。
出発点になったねずみさんのスピンオフドラマは、ありがちな展開だと思いますが、どうでしょう。
仕事で疲れて帰ってた自分を待ち受けていたドタバタに、冷静でいられる父親ってすごいなと、余計なことまで考えました。
大野八生さんの絵が、お話をマイルドにしていると思いました。
今年の課題図書だということですが、大人目線のレビューなので、子どもたちの参考にはなりません。 (ヒラP21さん 70代以上・その他の方 )
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