フェリシモ出版の「おはなしのたからばこ」シリーズ13巻は、『王子さまの耳はロバの耳』。 あれ?「王様の耳」じゃなくて、「王子さま」の耳? このお話は、ギリシャやポルトガルに伝わる民話を元に作家・岡田淳さんが創作された、王子さまのロバの耳のお話なんです。
「しっかり人の言葉をきけるように」という魔女の予言の力で、ロバの耳を持って生まれた王子。その耳を恥じて、帽子と髪で隠しながら育ちました。 しかし、やさしく賢く育った王子は、結婚相手を見つける年頃になると、自分の耳をありのままに見せることが大切と考えます。 そこで、床屋を呼んで髪を切り、お見合いをすることに。 ところが、王子を見た相手は、みんなロバの耳の外見にとらわれるばかりで、王子自身を見ようとはしませんでした。 何度も傷つく王子ですが、ついにある娘に出会い・・・。
ロバの耳をもった王子様は本物の愛を見つけられるのでしょうか。ハラハラして、ページをめくるのが待ちきれませんね。
イラストは『ショコラちゃん』シリーズでも人気の、はたこうしろうさん。ユーモラスなタッチで、このお話をキュートに軽快に、流れるように読ませてくれます。
元の民話は、伝わった地域によって結末がいろいろあるそうなのですが、岡田淳さんの語るこのお話はすてきなエンディング。「王子様はロバの耳のまま愛されるのがいい」と、岡田さんはあとがきで語られています。ホッとあたたかさが心に残る結末を、ぜひ本を開いて味わってみてください。
(長安さほ 編集者・ライター)
よく知られた「王さまの耳はロバの耳」も、たくさんの類話があり、本作の元になった民話では、王子にロバの耳が 生えてしまいます。王子はやさしく、かしこく、ひとの言葉をしっかりと聞ける若者に成長していくのですが、 床屋もお見合いをする娘たちも、耳にばかり気をとられ、王子の真の姿を見ることができません。けれども ロバの耳を隠す帽子を自ら脱いだ時、王子はこの姿をまっすぐに受けとめる娘と、心を結ぶことができたのです。 心の目で見るということ、自らを受け入れるということ、民話の形をかりて、新たに盛り込んだ作家の思いを、 表情豊かに描き出した絵が印象的。
はたこうしろうさんの作品だったのでこの絵本を選びました。はたさん独特の色使いが文章とぴったりと合っているのが素晴らしいと思いました。内面を見える目を持つことはとても羨ましいと思いました。運命の人と出会えたときに見せるうっとりとした幸福な笑顔が印象に残りました。生きることの意味と素晴らしさを感じられる絵本です。 (なびころさん 30代・ママ 女の子2歳)
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