大好きなプリンをゆっくり食べようと楽しみにしていたのに、「遅いから、手伝ってやるよ!」と、くまくんに食べられてしまったりすくん。食べられたのもくやしいけど、「ダメ!」って言えなかった自分がもっとくやしい。「このまま言わんかったら、ずっとこのままや」。ねる前に考えたりすくんは、その気持ちをくまくんに伝える決意をしますが……。
<ポイント> ・勇気を出すことの大切さ ・自分の意見はきちんと伝えよう ・友だちのあたたかさ
<おうちのかたへ> 勇気の一言でパワーアップした友情 教育評論家 尾木直樹 自分より強い相手に、言いたいことを伝えるには、誰だって勇気がいります。「怒られるかな」「イヤなこと言われちゃうかな」「聞いてもらえないかな」など…考え出すとキリがありません。子どもだけじゃありません、大人だって同じです。 この絵本の中でも、りすくんは、自分より強くて大きいくまくんに、「あやまって」の一言を言うのに悩みに悩みます。お布団の中でも…。 でも悩みぬいたすえ、勇気をふりしぼって、はっきりと「あやまって!」と自分の気持ちを素直に伝えるのです。 なぜ、りすくんは勇気を出せたのでしょうか。 それは、「自分の気持ちにうそをつきたくないという気持ち」、すなわち「プライド」が心の中に渦巻いていたからです。 単にくまくんに「プリンを食べられてしまったこと」が悔しかっただけなら、お母さんにグチを言って自分の気持ちをなだめることができたかもしれません。でも、りすくんは、これまでにも自分の気持ちを伝えられなかった後悔の経験がいくつもありました。だから、「もう、自分の気持ちにうそはつきたくない!」と決意したのです。 また、これがりすくんの嫌いな相手だったら、あきらめることができたかもしれません。でも、大好物のプリンを食べてしまったのは、よりによって、お友だちで仲良しのくまくんだったのです。 りすくんは、きっとくまくんに、本当の自分の気持ちを伝えたかったのだと思います。これまで、「いいよ」と許してきたことも、本当はイヤだったのだと。自分のこと、もっとわかってほしいと……。 そんなりすくんの真剣な気持ちが伝わったからこそ、くまくんは、素直にあやまってくれたのでしょう。こうなれば、二人の友情はさらにパワーアップ。勇気の一言から、お互いのそんけい尊厳を尊重し合える、新たな関係性が生まれたのです。
<編集者から> この絵本は、いもとさんの作品の中ではとっても珍しい、関西弁をしゃべるくまくんと、りすくんが登場します。くまくん自身は悪気は全くないのですが、その大きい体と大きい声に、りすくんはつい遠慮してしまいがち。でも、りすくんは、自分が思っていることをちゃんと伝えられなかったことを悔しく思って、勇気をふりしぼって、くまくんに気持ちを伝えるのですが、そのシーンは読んでいて力が入ります。「りすくん、頑張れ!」。 勇気を出した後の、りすくんとくまくんのすがすがしい笑顔を見ていると、とても幸せな気持ちになりますよ。
赤ちゃんの時から、全く攻撃性のない息子。私も優しい子に育ってほしくて、人に優しく、女の子や年下の子に優しくと育ててきました。息子は、嫌もダメも言った事がありません。世の中、みな優しい子ばかりならいいのだけど。幼稚園に通うようになって初めて分かった事は、あまりにも、乱暴で意地悪な子が多い事。くまくんは、決して意地悪したわけではないけど。息子に、ダメって言っていいんだよ、って教えてあげたい。 (あきみっちゃんさん 40代・パパ 男の子4歳)
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