この絵本は、色々な卵をとりあげ、卵の中から何が生まれるかを描いていく期待感いっぱいの絵本です。大きな版型と上品でいて大胆な絵で、よみきかせにもふさわしく、生き物が好きな子どもたちが楽しめる1冊となっています。 「いろいろこねこ」の絵でおなじみのアリス&マーティン・プロベンセンの1970年の作品。アメリカでロングセラーとなり、親しまれてきた名作絵本です。
●訳/こみやゆうさんからのメッセージ 私は自然と動物をこよなく愛す、プロベンセン夫妻の作品が大好きです。 二人は結婚後、ニューヨーク州の郊外に小さな農場を買い、植物や動物を育てながら、 納屋をアトリエにして創作活動をつづけました。 まさに二人の代表作「かえでがおか農場」の生活そのものだったのでしょう。 本作品も、そんな二人の日常生活の延長上にあったにちがいありません。 多種多様な命を育む「たまご」。その神秘さを科学的ではなく、詩的に表現し、 絵は1ページ1ページがまるで絵画のように美しく描かれています。 翻訳作業は、その原文から、否応なく意訳を迫られましたが、 小さい子どもたちにも分かりやすくなったと思っています。ぜひ、読んでみて下さい。
●担当者のうちあけ話 今回の絵本、原著の絵を見てすぐに「いい絵だなあ……」と思いました。 コルデコット賞を取ったときの著者の絵とはまた違う、おおらかで、 やさしくあたたかい雰囲気があふれていたのです。 「いろいろこねこ」の「当時の最先端!!」という画風ともまた違っていて、 たくさんの画風を持つ作家だなと感心しました。 それにしても、卵って、どうしてこんなに期待感がわくのでしょう。 中から何が出てくるのかな? と誰でもわくわくドキドキしてしまいます。 お子さんといっしょに、「次はだれの卵かな?」と楽しんで ページをめくっていただけたら、うれしいなあと思います。 わたしは、「チビコ(娘)もママのおなかの中の小さな小さな卵から生まれてきたんだよ」と 子どもと話しながら読みました。(K)
アリス&マーティン・プロベンセン夫妻の1970年の作品。
アリスは1918年、夫のマーティンは1916年のシカゴで生まれで、1944年に結婚。
翌年、ニューヨークへ移り絵本の挿絵を描くようになり、ニューヨーク・タイムズ紙の年間「最優秀イラストレーテッド・ブックス」に何度も選出。
1982年の「A Visit to William Blake’s Inn:Poems for Innocent and Experienced Travelers」(未訳)でコールデコット賞オナー賞、1984年の「栄光への大飛行」でコールデコット賞受賞しています。
今回の作品は1970年初版で、邦訳は2012年。
40余年の年月を経ての邦訳ですが、何故今というのが何となく分かる作品です。
物語は、卵について淡々と語ったもの。
それこそ、沢山の卵と生き物の関係が登場するのですが、この手の絵本にありがちな科学絵本っぽいところが微塵もありません。
卵を産むのはどんな動物なのかが、きっと皮膚感覚で理解できる、そんな作品です。
そして、この絵本の最大の特徴は絵。
表現するのが難しいのですが、心に染み入るような絵風は、多くの人に綺麗と映るはず。
全体を通じて、決して派手さはありませんが、安心して読み聞かせ出きる作品だと思います。 (ジュンイチさん 40代・パパ 男の子12歳、男の子6歳)
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