昔々、ある村で、大人はみんな田んぼへでかけて稲刈りをしていました。残った子どもたちがお堂のところで遊んでいると、見たことのない男がふらりとやってきて、「梨や柿がうーんとなってるところへ行ってみたくないかな?」と誘いました。子ども達が連れてって欲しいと頼んだので、男は子ども達を連れ、ごうっと風を起こして空高く舞い上がり、どこかの山の中へ。そこには柿や梨や栗がたくさんなっていて、子ども達は大喜び。ところが夕方になってあたりが薄暗くなると男は「用事があるからおまえ達だけで帰れ」と、どこかへ行ってしまいます。 暗くて、寂しくて、寒くて泣き出した子ども達は、山の中で見つけた灯りをたよりに家にたどり着きます。そこにはでぶでぶに太った大きなおばあさんがいて・・・。 こんなあらすじを読むと、恐ろしくて震え上がりそうですね。でも大丈夫。ちょっととぼけたタッチのイラストが、ほどよい緊張感と和んだ雰囲気を醸し出してくれます。絵の瀬川康男さんは『いないいないばあ』(童心社)や『ことばあそびうた』(福音館書店)のイラストで知られています。1972年初出作品の復刊ということで、味わい深い作品です。
(金柿秀幸 絵本ナビ事務局長)
おとなたちが田んぼにでかけてしまった村で、子どもたちが遊んでいると、見たことのない男がやってくる。 男は子どもたちを乗せて空を飛び、山へと連れて行くが、子どもたちを置いて去ってしまう。 困った子どもたちが、山を歩き、一件の小屋をたずねると、そこにいたのは、男の母である風の神だった。 月刊「キンダーおはなしえほん」1972年12月号初出。新潟などに伝わる民話絵本の復刊です。
新潟県に伝わる民話だそうです。
稲刈りで大人たちが留守の間に、遊んでいた子どもたちを、
見知らぬ男が誘い出し、なんと空を飛び、山に連れ去ります。
最初ははしゃいでいた子どもたちですが、そのまま山に置き去りにされて、
さあ大変!
とてもスリリングな世界です。
子どもたちが出会ったのは、風の神と南風と北風。
なんとなく、わかるような気がします。
瀬川さんの絵は、そんな不思議な世界を、独特の画風で盛り上げてくれています。
ある意味、子どもたちだけの世界。
そのことに、愛おしさを感じてしまいました。 (レイラさん 40代・ママ 男の子19歳、男の子16歳)
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