こねずみニリィは森で本を見つけました。 「おはなしのほんだわ」ニリィはにっこり。 おうちにもどって読んでみようとしますが、家では弟たちが大暴れ。お母さんの料理もはじまって、静かに本を読むことができません。 「どこか しずかに ほんを よめる ばしょは ないかしら」 ニリィはまた森へ、静かな場所をさがしに出かけます。 でも・・・どこへいってもニリィをじゃまするものばかり。 本を読むのをあきらめかけたそのとき、ニリィはいいことを思いつきました!
・・・さて、ニリィはどうしたと思います? すてきな結末は、ぜひ本書をお読みくださいね。
「ニリィの気持ち、わかるなあ」と、ほっとため息をつきたくなる人は、いるんじゃないでしょうか。 私自身も身に覚えがありますし、母になってからは、きょうだいの上の娘が絵やパズルをじっくり楽しみたいとき、下の子にじゃまされていらいらする様子をみて、困る時期もありました。 でもこの本のニリィの決断には、そうか、発想を変えるだけで「困ったこと」が「素敵なこと」に変わるんだなあ、とはっとさせられました。 ドイツの児童文学作家シュテファン・ゲンメルと、ベルギーのイラストレーター、マリー・ジョゼ・サクレ。 2人が贈る、読後感があたたかく、さわやかな絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
こねずみニリィが森をいくと、本が1さつおちていました。おはなしが大すきなニリィは本をよんでみようと思うのですが…。おうちのなかではおとうとたちが大あばれ、森ではキツツキが木にあなをあけています。うるさくて本をよむどころではありません。あきらめかけたそのとき、ニリィはすてきなことを思いつきました――。
どこで本を読むかは、読書好きな人にとって重要な問題です。
ふとんの中、書斎、トイレ、公園のベンチ、コーヒーショップ、さまざまあるでしょうが、私は断然電車の中。仕事に向かう、または仕事から帰る電車の中。
適度に揺れて、適度に賑やか。案外通勤電車というのは静かなものです。だから、ページが進みます。
もっとも絵本には適さない。読むスペースの問題で。
絵本を読む時は、部屋の中。きちんと座って読みます。
ある日、森の中で一冊の本が落ちているのを見つけた、こねすみのニリィ。
お話が大好きなニリィはいそいで家に戻って、さっそく本を読もうとします。
ところが、「ガッタン ゴットン ガガーン」って大きな音が。ニリィの家にはやかましい弟たちがいたのです。
なんとか彼らを家から追い出して、さあゆっくり読めると安心したニリィですが、今度は台所からおかあさんねずみの晩ごはんの支度の音が。
生活騒音っていうのでしょうか。思った以上に大きく響くものです。
仕方なく、森へ行って本を読もうと決めたニリィですが、キツツキの音もアナグマさんのいびきの音も気になって本どころではありません。
草原には風の音が、池には蛙たちの合唱が。
どこで本を読むかは、今やニリィにとっては大問題です。
悩んだ末に、ニリィはいいことを思いつきます。
音を出して自分のじゃまをするみんなを集めて、おはなし会をすればいいんじゃないかって。
ニリィの思いつきは自分だけでなく、まわりも幸せにします。
読書のじゃまをするものを味方につけてしまおうという方法です。
おとなの人が絵本を読む時、なかなかいい場所がありません。だったら、ニリィのようにおはなし会で読むのも最高です。
声を出して、みんなの表情を見ながら、絵本の世界に入り込めるなんて。
ちいさなこねずみに教えられた知恵です。
本を読む一番お気に入りの場所。
そんな場所を持っているのは幸せです。
だって、そこが一番心地いいところなんですから。 (夏の雨さん 50代・パパ )
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