【内容】
小さい女の子が、朝、ひとり目が覚める。お腹がすいているが、両親はまだ寝ている。台所に行くとご飯がちょうど炊けている。冷蔵庫を開けると、ご飯のおかずになりそうな品物たちがあれこれ。さあ、どれにしようかな?
【感想】
まず、絵をよく見て楽しめる。ご両親の掛布団が朝ごはん関係だ。父は納豆、母はふりかけの柄。三人、川の字になって寝ている真ん中の娘は目玉焼きの布団。なんて愛されている、円満な家庭なのだろうか。
家の中の小物類も、是非とも目ん玉を皿のようにして観察して欲しい。意外なところに朝ご飯や食べ物に関する愛情が表現されている。家族も大事にするが、食べ物も大事にする食育一家である。
そしてご飯は、白米。ピカピカの銀シャリである。冷蔵庫の中身はいたって庶民的な、普通のおかず。私の家よりもお金持ちと見たが、おそらく誰でも一度は食べたことがあるものばかり。普通のスーパーで買えるものばかりである。そのため、絵本を読んでいる途中から、自分の家の冷蔵庫を開けて同じようなものを食べたくなる効果がある。日頃から食べ過ぎている人は、注意が必要である。
圧巻は、たらこ。たらこ嬢、と呼びたい。たらこがこんなにも色気のある存在だったとは、まるで知らなかった。不細工の代名詞だと誤解していた。たらこは、「うっふん と、横たわる」妖艶な熟女だったのである。そうなると、更に刺激的な明太子に至ってはどうなるのだろうか…ドキドキが止まらない。たらこ嬢だけで、このような魅力があるのである。他の連中だって、そうとう控えめに描かれているが、本来はもっともっと素敵な、絶叫するような素晴らしさであるに違いない。
たらこ嬢にばかり気持ちが囚われてしまい、早速、その日のうちに買い求めに走った。魅力というよりも、魔力のある絵本であった。