表紙の2人の子どもの絵を見て、「女の子、川の地図を見てるのかなあ? このちっちゃいの(!)、きっと女の子の妹だよ。」と、あれこれ話しながら、子どもたちに興味津々の様子の娘。ところが、読み終わると、「えっ?女の子はどこ? 女の子のお話じゃないの?」と、まだここからお話の続きがあると思ったらしいのには、苦笑してしまいましたが、読んでいる間は、女の子のことなどすっかり忘れて、1ページごとに細かいところまで食い入るように見ながら、ゆっくりと20分くらいかけて楽しんでいました。正直言って、こんなに夢中になるとは想像もしていなかったので、うれしい驚きでした。
加古さんの「ゆきのひ」の本もそうなのですが、淡々とした流れで、題材も、絵も、どちらかと言うと、地味なのに、これほどまでに幼い子どもの心をひきつけるのはなぜなのでしょう? 「からすのパンやさん」や「おたまじゃくしの101ちゃん」などのように、愉快なストーリーはなくとも、米粒よりももっと小さな絵の中に、いろんな発見があり、楽しみが隠れているのですね。「うまをあらうひと」と言えば、すぐにその絵を探し、「にわとりもいます」・・・「あっ、ここだ!」(かろうじてトサカの赤い色が点の大きさで見えるだけ!)と、次から次へと見つけていっては、楽しんでいます。沼がある絵のページでは、「いろんな大きさのがあるね。こっちは、ボートをこぐところでしょ、ここは、鳥が住んでるところ。小さいのは、子どものプールだね。」と言ったり、堤防を作っているページでは、「まだここが開いてるよ。ここにも砂を運んでこなきゃ、水が流れてきたら大変だよ。」などと話していました。牧場のそばを走るトラックの絵からは、「牛乳屋さんだ!牛のミルクを運んでるんだね。」と、今では見られなくなった光景ですが、酪農の仕事も理解し、また、浄水場や発電所、浚渫船などの難しい言葉やその仕組み・役割にも興味を示しながら、いろんなことを学んでいました。加古さんの絵本は、こういうところが、本当に素晴らしいですね。
私が1番感動したのは、最終ページです。「うみ!・・・どこまでも どこまでも みずのつづく うみ。うみを こえて いこう。ひろい せかいへ」 川の水の一滴に、自分自身の人生を重ね、これまでの長い旅路を振り返りながら、万感の思いがこみ上げてきました。娘にも、大きな夢を持ち続けてほしいな、と願っています。