これは、なんというか…シュールな世界です。
すうくんは、お父さんと公園に行きます。
「ねえ、お父さん、木になって」
すうくんがこういうと、お父さんは、いきなり「木」になってしまうのです。
うわあ、シュール!
すうくんは、木になったおとうさんにのぼろうとしますが、
なかなかのぼれません。
「ねえ、どうやってのぼるの?」
と聞いたすうくんに、お父さんは、声にださないで、
「木はなんにもいわないの」と言います。
その後、がんばって木にのぼったすうくん。
高くていい気持ち。
でも、木には毛虫がいたり、時折犬がやってきて、おしっこをひっかけていったり。
すうくんがあわてて、一生懸命声をかけても、
お父さんはやっぱりこういうのです。
「木はなんにもいわないの」
今度は木からおりる番。
でも、どうやっておりればいいのか、すうくんには分かりません。
でも、お父さんは「木はなんにもいわないの」
すうくんが思い切って木から下りると、
そこには人間にもどったお父さんがいました。
「ねえ、どうして声を出さなかったの?」
「木はなんにもいわないの」
お父さんはこう答えました。
こう書いてみると、いったい、なんなのー!と思われるかもしれません。
でもこれがどうしてどうして。
じわじわと面白さがこみあげてくるのです。
子供もたいそう面白がっていました。
この面白さは、実際に読んでみないと分からないかもしれません。
これは乱暴な言い方ですが、「長新太さん」に通ずるものがあるように思います。
意味をこじつけようと思えば、
親は、子供にとって、木のようなものだとか、
子供は、自分で何事も学び取っていくものだとか、
いろいろ言えるのかもしれませんが、
この絵本は、読んだ人それぞれに、解釈があるように思います。