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ウミガメってこんなにかわいい仕草をするの? とまずそのことにびっくりしちゃう写真絵本。沖縄の海に住むウミガメ「花子」を通じて、ウミガメの生態や、迫る危機を取り上げます。
作者の黒部ゆみさんは、旅行で訪れた沖縄の海の美しさに魅せられて移住。水中写真家となり、地域で「花子」の愛称で親しまれる子どものウミガメを撮るようになったそう。花子は人懐こく、ぷかぷか浮く黒部さんとじゃれあうように泳いだり、ヒレで自分の背中をかいたりお腹をスリスリしたり……。とっても表情が豊かです。
また別のウミガメの産卵シーンや、孵化した子ガメが海を目指す場面も(花子自身はまだ産卵の可能性があるような時期には達していないとか)。本文によると子ガメは孵化する砂の温度によって性別が決まるらしく、29度より高いとメス、それより低いとオスになる。ということは、地球温暖化が進むとメスしか生まれなくなる将来もあり得ます。水中のプラスチックゴミ問題も深刻で、ウミガメの場合は大好物のクラゲと間違えてビニール袋を食べてしまうのだそうです。
今や絶滅危惧種に指定されているウミガメたち。いつまでもこんなふうに悠々と沖縄の海で泳ぐ姿を見たい……。そのために私たちが学べることはまだまだありそうです。ウミガメの生態からその危機的な状況まで、たくさんの情報が詰まった写真絵本。小学2・3年生以上にちょうどよく、一方で幼い子は写真だけでも楽しめます。わが家の小1はサンゴがいっせいに産卵する神秘的な写真に「わぁ……!」と感嘆していました。海の美しさ、ウミガメの愛らしさを、ぜひ絵本で見てみてくださいね。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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ウミガメの生態と、迫る危機を取り上げた写真絵本。 ウミガメは世界で人気の生き物ですが、沖縄で見られるアカウミガメ、アオウミガメ、タイマイの3種は、いずれもIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで絶滅危惧種に指定されています。 ウミガメに迫る危機の大きな原因になっているのは、まず、地球温暖化です。地球温暖化が進むと、海の水位が高くなって砂浜の面積が減少し、産卵が困難になるばかりか、食べ物となる生物が減少し、くらしていけなくなります。 また、メスばかりが生まれてしまうため、絶滅する可能性もあります。砂浜に産まれたウミガメの卵は砂の温度で性別が決まり、29度よりも高ければメス、低ければオスになるからです。 もう一つの原因は、プラスチックごみです。ウミガメは肺呼吸をするため、息継ぎをしに浮上しますが、水中にただようロープやビニールごみにからまり、浮上できずに呼吸ができなくなって、死んで打ち上げられる個体が多くいます。 もちろん、プラスチックを鼻や口からのみこんで死んでしまうこともあります。 この本では、取材地の沖縄の海で、地域の人々に愛されているアオウミガメの「花子」と著者の出会いをきっかけにして、ウミガメの姿や種類、産卵のようすや子ガメのふ化、海への旅立ちを迫力の写真で紹介し、後半では前述したウミガメに迫る危機に加えて、地域の人々の保護の努力も紹介されます。 著者が間近で撮影したウミガメの花子のかわいらしい表情やしぐさと、ウミガメが卵からおとなになるまでの生きぬくきびしさを織り交ぜながら、ウミガメに関するさまざまな知識と、世界でおこっている環境問題を子どもたちに伝えます。

表紙の躍動感あるウミガメの写真に惹かれ、手に取りました。
沖縄の海に魅了された水中写真家の作者が、ウミガメ「花子」の生活を追った写真絵本です。
きれいな海やかわいい仕草をする花子に魅了されました。
でも、お話の最後には、人間のゴミが原因で死んでしまう生き物のことにも触れられています。
「きっと、できることがあるはずだ」というセリフには、作者さんの思いや決意を感じ、ぐさっときました。 (クッチーナママさん 40代・ママ 女の子19歳、女の子16歳、男の子13歳)
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