この絵本は実話をもとにしたおはなしです。
主人公はふたりいます。レスキューとジェシカ。 レスキューは介助犬。ジェシカは女の子です。 レスキューは黒のラブラドール。訓練を受けて盲導犬ではなく介助犬になりました。 ジェシカは両足に大怪我を負って、左足は手術で切断されました。義足をつけた生活が始まりました。
自分は誰かの役に立てたら嬉しいのだけれど、と思うレスキューと、もう、しあわせな気持ちになることなんてないんじゃないかなと思うジェシカが、ある日、出会います。
レスキューは介助犬として訓練通りよく働きます。扉を開けたり、物を取ってきたり。 でも、本当に辛い時――ジェシカのもう一つの足も切断しなくてはならなくなった時、自分がジェシカのためにできるのは、ただじっと側にいることだけだと、その意味をわかっているのでした。
あとがきによると、ジェシカは2013年のボストンマラソン爆破事件で大怪我を負い両足を失いました。実際のジェシカは大人で、夫のパトリックも片足を失いました。新婚の二人が心身共に受けた衝撃は計り知れません。そのふたりが「生きる力を与えてくれた」レスキューとの出会って、この絵本が世にでることになりました。 本の帯にはこうあります。 「レスキュー、私たちをあの手この手で笑わせてくれ、元気づけてくれ、 人生という旅を共に歩んでくれて、本当にありがとう。 あなたのおかげで、毎日が輝いています。 ジェシカ・ケンスキー、パトリック・ダウネス」
小学校では福祉について学ぶ時間があります。点字や手話、ユニバーサルデザインなど調べ学習で図書館もよく利用されますが、その中で介助犬、盲導犬、聴導犬の本もよく借りられていきます。 この絵本の巻末にも日本の補助犬についての説明が載っています。 併せてこの絵本を紹介するのもいいですね。
中学年、高学年への読み聞かせにお勧めします。
(山田裕子 小学校司書)
レスキューは、盲導犬の血筋に生まれた子犬です。ところが、訓練士から盲導犬には向いていないと言われ、介助犬の訓練を受けることに。 一方のジェシカは、両足に大けがを負った女の子です。けがのせいで、手術で足を切断しなければならなくなります。 不安と絶望のなか、出会ったふたりはいつしかお互いにかけがいのない存在になっていくのでした……。 作者のジェシカとパトリックは、ともにボストン・マラソン爆破事件でけがを負いました。「私たちはいろんな方々に支えられてきました。この物語を読んで、みなさんが誰かの力になりたいと思ってくださることを願っています」と語るふたりの、実話をもとにした絵本です。
この絵本のモデル、ジェシカ・ケンスキーさんが、2013年に起こったボストン・マラソン爆破事件で、負傷して両足切断に至ったという経緯は衝撃でした。
多くの人が集う市民マラソンの場で、このようなテロが行われたのですから。
ついつい市民マラソンに対する思いに引きずられそうになってしましましたが、誰もが開放的に走る喜びを感じる場で、両脚を失うような事件に巻き込まれたのですから、ジェシカさんの心の傷は想像するに思いあまります。
その心をも癒してくれるのが、介助犬のレスキューです。
介助犬レスキューは、ジェシカさんの生活支援者でありながら、心のパートナーなのです。
レスキューは犬であるけれども、介助ということを通して、障がい者支援についても考えさせてくれました。
介助にスキルは必要ですが、信頼関係の構築こそ、より良い介助の支えになるのでしょう。 (ヒラP21さん 70代以上・その他の方 )
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