●「レオ・レオニ作品との出会いは娘が生まれたから」
───カナガキさんとレオ・レオニ作品との出会いは、いつですか?

───どんなところに心を奪われたのでしょうか?
まずは色の鮮やかさと、配色のバランス、登場人物たちもすごい可愛いし、おはなしもさらっと読めました。でも、娘と一緒に何度も読んでいくうちに、次第に「この作品は思った以上に奥が深いぞ…」と感じるようになりました。
――廣川さんはレオ・レオニ作品との出会いはいつですか?
廣川:私も小学生のころ、教科書に載っていた『スイミー』が出会いだったと思います。今回、展覧会のために作品はもちろん、レオ・レオニの生涯にも触れることとなり、絵本作家以外の顔も多く持っていることに驚きました。
───レオ・レオニというと、絵本作家以外にもイラストレーターやグラフィックデザイナーとしても活躍していたんですよね。
廣川:そうなんです。絵本作家としてのデビューは遅く、49歳のときにお孫さんの為に作った絵本が『あおくんときいろちゃん』だったんです。
───そうなんですか! 49歳のデビューから亡くなるまでに40作近い作品を生み出されたんですね。カナガキさんはその作品をほとんど読まれてきたんですよね。
もちろんです!
───それでは、カナガキさんの心に残ったレオ・レオニ作品をご紹介していただきましょう。
───言わずと知れた、レオ・レオニの代表作のひとつですね。
これは娘が2歳くらいのときの一番のお気に入り絵本でした。僕にとっては子どもの頃抱えてきたモヤモヤとした感情の答えをもらえた絵本です。
───…といいますと?

───絵本ナビのレビューを読んでみると、「フレデリックに共感する」という方もいれば、「やっぱり協調性を持たないと…」という方もいて。意外に感想の内容がそれぞれ読む方によって違っていますよね。

展覧会で販売予定の素敵な数々。
───レオ・レオニ作品は特に子どもだけでなく幅広い年齢層が楽しめる作品ですよね。
廣川:そうですね。特に『フレデリック』は女性の方のファンが多いので、展覧会のPRツールのデザインに使用したり、大人女子向けのかわいいデザインのグッズも展覧会に向けていろいろ用意しています。
――このしおりのフレデリックが、ピョコンと起き上がるようになっていて、とても可愛いんです!いろんなところからフレデリックをのぞかせてみたくなりますね(笑)。
胸ポケットにさりげなく挿して宣伝中。
───『じぶんだけのいろ』に対する、カナガキさんご自身のエピソードは何かありますか?

これも、子どもの頃に遡るのですが…小学校の頃、我が家は5年続けて引越しをするくらい、親の転勤の多い家でした。新しい土地に行くたびに、自分の居場所がどこにあるのか、自分が何者なのか、という悩みを持つようになりました。その思いは結婚して子どもができても変わらず、住んでいる場所もいずれ引っ越すだろうという意識が今もあるんです。でも、どこに引っ越したとしても、家族でいっしょにいれば変わらないよねというのが我が家の考え。『じぶんだけの いろ』の「きみと ぼくは いつも おんなじ」という一文には、それとすごく同じものを感じますね。
───レオ・レオニ自身も、オランダからイタリア、アメリカ、そしてイタリアと移動を余儀なくされた一生を送っていますよね。レオニ自身も自分だけの色を探し求めていたのかもしれませんね。

───そうなんですか?なんだか意外なセレクトです。
結婚式の定番絵本といえば『しろいうさぎとくろいうさぎ』なんですが、あれは恋の話なんですよね。いずれ恋は冷めるんだよね~って(笑)。
――先輩からのリアルなメッセージですね(笑)。
『じぶんだけのいろ』は冷めても大丈夫! 同じ色に変わることに価値があるんですから!って。