副題に「砂漠を緑の町にかえた ある女のひとのおはなし」とあります。 そんなことできるの?と思った方は読んでみてください。 これは本当にあったお話なのです……。
ケイトは、森で遊ぶのが好きな女の子でした。 葉っぱを集めたり、花といっしょに編んでネックレスやブレスレットを作ったりしました。 お外遊びが好きな多くの子どもたちは、あ、わたしと同じ!と思うでしょう。 ケイトがちょっと違うところは…… その頃、約150年前のアメリカでは、女の子は手を汚すことをしてはいけないと言われ、女の子が科学を学びたがるなんてとんでもないと思われた時代でした。 でもケイトは平気でどろんこになり、周りにどう思われても、熱心に科学の勉強をしつづけたのです。 カリフォルニア大学を「はじめての女性の科学者」として卒業し、茶色の砂に覆われた砂漠の町、サンディエゴで働くことになりました。
学校の先生として赴任したケイトでしたが、どうしても木や森をサンディエゴに増やしたくてたまらなくなり、先生をやめて園芸家になります。 ケイトがしたのは、世界じゅうの木について調べること。 世界じゅうの園芸家に手紙を書き、種をとりよせ、暑く乾いたサンディエゴの気候にぴったりの木を探しつづけました。 友だちに「そんな木を見つけるなんてむりだ」と言われてもあきらめませんでした。 「きっと見つかる」 ケイトはそう思っていたからです。
ケイトがどんなふうに木を植え、緑の町を作り出したのか。 ジル・マケルマリ―描く、あざやかな風景を楽しみにページをめくってみてくださいね。 今ではサンティエゴの観光地として有名なバルボア公園、それこそが、ケイトが作りだした緑の庭園です。 強い日差しを遮り、涼しげな緑陰を広げる木々を、1種類ずつ探してきて植えはじめたのは、ひとりの女のひとでした。
どんな小さなことも、「すき」という気持ちからはじまること。 そして、たったひとりのあきらめない気持ちが、広い風景を変える力があることを、教えてくれる絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
ケイトは森のなかで遊び、木がともだち。木の勉強がなによりすきな女の子です。どろんこになって女の子が森に遊ぶなど、考えられない時代でした。カリフォルニア大学をはじめての科学の学士をとった女性として卒業したケイトさんは、教師となって、サンディエゴで働くことになりました。赴任してはじめてみたその町は、なんと、木がほとんどない砂漠の町だったのです! 1857年、サンフランシスコに生まれ、園芸家として生きた女性、キャサリン・セションズ。サンディエゴにあり、膨大な種類木々や草花で有名な、現在のバルボア公園の原型をつくった女性です。自分の夢を信じて生きたケイトさんの半生を描いています。
北カリフォルニアで育ったケイトは木が大好き。葉っぱでたくさん遊びました。学校では科学や生物の勉強が大好き。19世紀の この時代、女の子が科学の勉強をすることは稀でしたが、ケイトは大学にも行って学びました。
南カリフォルニアのサンディエゴで働き始めたケイトでしたが、この町には木はほとんどありません。ケイトは専門家らしい知識を駆使して、町に木を植え始めます。
サンディエゴは、今では緑でいっぱいの美しい町だそうです。おはなしの中では淡々と描かれていますが、19世紀、女性が大学で科学を学び、さらに 赴任した地で、率先して町を変えていくことは大変なことだったのではないでしょうか。
調べてみると、ケイトが大学を卒業した1881年は、朝ドラで有名になったあさちゃん、広岡浅子が炭鉱事業を始める少し前です。アメリカでも日本でも、女性が「女性」という枠に押し込められることなく、自分らしく生きようとし始めた、そんな時代だったのですね。
大好きな一筋の道を歩み続け、乾いた町と人々の心に 緑で潤いをもたらした実在の人物、ケイトのおはなしです。明るい緑、深い緑、そして木の幹の茶色が調和した とても素敵な絵本です。 (なみ@えほんさん 50代・その他の方 )
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