『ぼくのおじいちゃん』というタイトルの本。 でもページをめくって始まるのは、おじいちゃんと隣人ライトさんのお話でした。
自由気ままにゆったり暮らすおじいちゃんと、時間や予定に追われる様子の働き盛りのライトさん。 主人公「ぼく」の目線で語られる文は、はじめから終わりまでほとんどおじいちゃんだけを話題にしています。
けれど、どのページを開いても片側でおじいちゃん、片側でライトさんの生活を映し出して対比しているのです。 働く大人が読めば、語られないライトさんの生活にこそ目がいってしまうかもしれません。
「わしも むかしは じかんを きにしていた」
作中に、おじいちゃんのこんなせりふがあります。 深読みがすぎるかもしれないけれど、もしかしたらライトさんの姿って、そのまま昔のおじいちゃんなんじゃないかしら……なんて思ったり。 考えをもう一歩追いかければ、これはおじいちゃんとライトさんの個人的な話というより、忙しい現代人への問題提起なのかも……なんて思ったり。
一方で、きっと子どもたちならごくありのままに「2人の違う生活をする人のお話」として受け止めるんだろうなあ、とも思います。 新聞の折り紙もアルバム鑑賞も、絵本の中のおじいちゃんと一緒に楽しめそう。 読む人の年代や置かれる状況で、何重にも意味が読み取れる絵本です。
読後、心に何かひっかかるものがあるとすれば、それこそがあなたの「いま本当にほしいもの」なのかもしれません。
2014年にボローニャ国際児童図書展で国際イラストレーション賞を受賞した、ポルトガル人作家のカタリーナ・ソブラルさんによる絵本。 日本語訳は雑誌「暮しの手帖」前編集長、松浦弥太郎さんです。
(てらしまちはる ライター/こどもアプリ研究家)
「ぼくの おじいちゃんの いちにちは、とっても たのしそう! 」 「ぼく」はおじいちゃんが大好き。いつも忙しそうなお隣さんとはちがって、ゆったりしているおじいちゃんの暮らし。「ゆたかな時間」ってどんなだろう? ゆったり時間を過ごしているおじいちゃんの日常を孫の視点で描く絵本。いそがしく毎日を送る人や、普段絵本を読まない男性にも贈りたくなる絵本。ポルトガル人作家、カタリーナ・ソブラルらしい魅力的な色彩で描かれた版画調のイラストと、松浦弥太郎さんのやさしくユーモラスな訳文が響き合います。ポルトガル語の原書から現在11言語で翻訳、2014年ボローニャ国際児童図書展、国際イラストレーション賞受賞。
孫世代から見たら、おじいちゃんはこのように見えているのでしょうか。
定年になって悠々自適、好きなことができて、おまけに元気、理想のようで、暇をもてあますような生活をしているのでしょうか。
当事者からすると、いろいろに考えさせられる絵本です。
かつては、いろいろな重荷から解放されるイメージを持っていた自分ですが、いざその年になってみると、やりたいこと、好きなことをやっているだけといわれてしまうのは、ちょっと抵抗を感じました。
あくせく働かなくて良くなったことと、だらだら生活してよいということとは、全く異質のものです。
健康でいて、なにかしら社会との関わりは持ちたいですし、無責任でいてはいけないと思っています。
ともかくも、人の世話にならず、自律できていることが一番でしょうか。
ともかくも、大人として考える材料の多い絵本ではあります。 (ヒラP21さん 70代以上・その他の方 )
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