どちらが本当の母親か? 大岡越前名さばき
母ひとり子ひとり、貧しいながらも楽しく暮らしていたお里さんと娘のお花。一方、お花の父親の再婚相手のお絹さんには子どもがおらず、お花が欲しくてたまらない。ある日お花が病気になり、薬代がはらえず途方にくれたお里さんは、娘を助けるためやむなくお絹さんにお花を託すが……。大岡政談の名作が、前作『三方一両損』に続き、宝井琴調・ささめやゆきのコンビによる人情味あふれる講談絵本となって登場!
江戸時代、裕福な商人の家で夫婦が離婚した後に生まれた子どもをめぐって起きた揉め事と大岡裁きの話。
離婚の原因は書かれていないが、その後の話の展開を読むと、なんとなく大人の事情が見え隠れしている。
最初の妻と、2番目の妻の人柄が正反対と言っていいほど違っている。絵でもその性質がよくわかるようにデフォルメして描かれているが、最初の妻は真面目で愛情深いくて地味な人。2番目は容姿は美しいが情が薄く、利己的で目的のためには手段を選ばない。間に挟まった夫という人は、おそらく最初の奥さんとの生活に飽きてしまい、派手さや刺激を求めて別のタイプの女性に興味を持ったのだろうか。あまり出てこないが、二番目の女性の迫力に押されて、いいように操作されている男のような気がする。
別れた後に生まれた子どもをしっかり育てようとするシングルマザーのけなげな努力は、昔も今も変わらない。
この話では最終的に無理やりハッピーエンドに持っていくが、現時はどうして。いろんな遺恨が残るだろうと思った。
とはいえ、講談は人に夢や希望を与える役割もあるようで。途中はかなり理不尽なことが起きても、最終的にはしっかり改善懲悪的な終わり方をする。
現実の人生もこの話のように、全てがうまくいくと思えるといい。子どもに対する愛情について、考えさせられる一冊。 (渡”邉恵’里’さん 40代・その他の方 )
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