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悪魔と優しい女の子の心のお話。
悪魔のおじさんを、いい人と勘違いしてしまう女の子。女の子は、悪魔が置いていった毒入りリンゴを、おじさんのためにとっておこうと考えます。そんな女の子の優しさにふれて、悪魔が悪魔ではなくなってしまうお話。
タイトルといい、絵といい、不思議な絵本です。
老いて魔法の使えなくなった、腹ぺこの悪魔が出会ったジプシーの少女に感じたのは食欲と少女への思いやり。
自分自身で葛藤して、少女の選択に委ねます。
毒りんごになって、少女が食べれば死んだ少女を食べるとしよう。
しかし、少女はおいしそうなりんごを目にしながら空腹をがまんして悪魔が帰ってくるのを待ちます。
その心にうたれた悪魔の涙。
少女は母親と再会し、しあわせな日々。
悪魔はりんごの木になったけれど後悔はしていないのでしょう。
少女が育ち、結婚して、子どもが生まれる。
歳月が過ぎても少女は悪魔が戻ってくるのを待っているのです。
ホンの1日足らずの出会いが、少女にとっても、悪魔にとってもとても大きな時間となりました。
少女は悪魔を命の恩人と思っているのでしょうか?
それほど長い間、悪魔を思う心が続くのでしょうか?
考えれば不思議な話です。
そして、不思議なくらい心温まってくるお話です。
宇野亜喜良さんの、少し偽悪的で乾いた絵がマッチしています。 (ヒラP21さん 50代・パパ 男の子12歳)
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