丘の上の草むらの中にある小さなお店「アリィのおとどけやさん」は大繁盛。ありのおじょうさんアリィが荷物を届けてくれるのです。
「おおきなものも ちいさなものも なんだって、とどけますよー」
なんて頼もしいのでしょう。その上アリィはお仕事が大好き、休んだこともありません。友だちのイモムーが遊びにきても、いつも「またこんどね」と言って仕事に出てしまいます。だけど、そんなある日。仕事の合間に時間ができて、ふとぼんやりしていたアリィは気づきます。(あれ?)なんと、彼女は生まれて初めて……ぼーーっとしたのです! この発見は、アリィ自身を少しずつ変えていきます。そして思い浮かんだのは?
誰かにとっての大事な時間、それはそれぞれ違うもの。目の前の仕事に夢中だったり、誰かのためを思って動いていたり、好きな人と過ごす時間を大切にしていたり。だけど、時々は周りを見たり、相手の気持ちを想像してみるといいのかもしれませんよね。アリィとイモムーの素敵な関係を見ていると、そんな風に思うのです。
新進気鋭の童話作家大久保雨咲さんによるはじめての絵本を、大人気吉田尚令さんの絵で。あどけない表情からあふれているのは、素直で純真な心。彼らの過ごす最高の一日を願いながら、そっと絵本を閉じるのです。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
【内容紹介】 ありのおじょうさんのアリィは、くさむらのおとどけやさん。働き者で、ぼーっと時間をすごしたことがありません。いもむしのイモムーがあそびにきても、いつも「お仕事だからまたこんどね」。でもある日……。
のんびりイモムーとてきぱきアリィの「あそぼうよ」「またこんどね」のやりとり、子どもたちはもちろん、おとなの方も思いあたりそう。イモムーがいつまでもイモムーではいられない結末に、なにか大事なことが思い出されるかもしれません。
【作者・大久保雨咲さんからのメッセージ】 わたしはいつものんびりとしていて、しょっちゅうまわりの大人たちから「はやくしなさい」と言われているような子どもでした。足もとにある石をただぼんやりと見ていたり、窓ガラスを流れていく雨粒をじぃーっと眺めていたり……。確かに何でもはやくこなせれば、それは素晴らしいことです。でも、ぼんやりすることで、見えてくる世界もあるんじゃないかなあ。そうだ、ぼーっとする絵本を作りたい。そう思ったのが、この絵本のはじまりでした。
毎日忙しいアリィとのんびりやのイモムーは、いつもすれちがい。でも、アリィがあるとき、ぼーっとすることで世界が少しだけ変わります。そう、少しだけ……。
毎日の忙しさをちょっとゆるめると、そばにある大切なものがくっきりと見えてくるかもしれません。吉田尚令さんが、虫たちの世界をとってもチャーミングに描いてくださいました。愛らしくてゆかいな虫たちの絵本です。楽しんでいただけますように。
絵本を読み聞かせしながら、自分がアリィと似ている気がしました。
一生懸命仕事ばかりやりすぎて、ふと気づくと燃え尽きそうというか、なんだか虚しくなるときがあって、その気持ちがアリィと似ている気がして、燃え尽き症候群にならないように気をつけないとと思ってしまいました。
まさか、子どもの絵本でそのことに気づかされるとは思わなかったので、びっくりです。 (ちびっこおばちゃまさん 40代・その他の方 男の子5歳)
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