森のはずれに小さなモミの木が一本立っています。小さなモミの木は、暗い森の大きなモミの木たちから少しはずれて立っているのをさびしく思っていました。ある日のこと、男の人がやってきて、小さなモミの木を根こそぎ掘りだし、森をぬけた小さな男の子のいる家に運んで行きました。
「ここまでやってこれない息子と一緒に、大きくなっておくれ」
小さな男の子は足が悪くて、家から出られなかったのです。部屋の中でモミの木はモールや鈴や星が飾られ、輝くクリスマスツリーとなり、クリスマスキャロルの歌声とともに男の子を楽しませました。そうして、毎年冬になると、モミの木は男の子の部屋で過ごし、大きくなっていきました。
ところがある年の冬、いつまでたっても男の人が来ません。もうモミの木にとってはクリスマスなしでは、この世はただ大きくからっぽに見えます。するとその時、遠くの方から歌声が響いてきて……。
いくつもの冬を重ねながら、北国の自然の美しさとクリスマスのささやかな喜びを描いたこの絵本。息子への願いを込めてモミの木を運ぶお父さん、モミの木がやって来るのを心待ちにする男の子、クリスマスの日の喜びを全身で感じるモミの木。それぞれの出会いと心のふれあいを想像しながら読んでいるうちに、心が洗われていくようです。
マーガレット・ワイズ・ブラウンにより丁寧に紡がれる物語と、赤と緑で静かだけれど印象的に描かれるバーバラ・クーニーの絵。さらに楽譜付きで登場する3つのクリスマスキャロルのうた。クリスマスの絵本の傑作として長く愛され続ける理由が伝わってきますね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
小さなモミの木は、ある日、男の人によって掘り出され、家へと運び込まれました。その家には病気で歩けない男の子がいたのです。男の子とモミの木はクリスマスを一緒に過ごします。そして冬が終わるとモミの木はまた森に返されるのです。それから何年もクリスマスが来るたびに、モミの木は男の子と共に楽しく過ごしました。けれど、ある冬、いつになっても男の人は、モミの木を掘り出しにはきませんでした。男の子が心配でたまらないモミの木は……。
ひんやりとしたクリスマスの空気が
感じられる絵本でした。
クリスマスの絵本も毎年少しずつ手に入れたいと
思っているのですが、この絵本もぜひとも手元に
置きたいな。
静かで美しくて厳かなクリスマスを手に入れる
ことができるように思うからです。
バーバラ・クーニーさんの絵もとても美しくていいです。 (ぽこさんママさん 40代・ママ 女の子3歳)
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