ここは街の真ん中にある消防署。
「みてくれ、ぼくのはしごを」
得意気な顔で言うのは、はしご車ののっぽくん。どんな高いビルが火事になっても、彼がいれば心配ないね。
「ぼくの鼻息の強いのを、知らないな」
その立派な車体を自慢しているのは、高圧車のぱんぷくん。なんて頼もしいのでしょう。
「おっと、まってくださいよ」
自分がいないと困るでしょ、と言うのは、救急車のいちもくさん。そのかっこいい姿にうっとり。大きな火事があれば、彼ら三台が揃って飛び出して大活躍をするのです。子どもたちにも大人気です。
あれれ、消防署のすみっこにはもう一台いますよ。ジープを改良したその小さな車体にはポンプが付いています。ぷーぷーとなるサイレンだって付いています。彼の名前はじぷた。ところが、だあれもじぷたの事を気にかけません。じぷたは出番がないからでしょうか。いえいえ、そんな事はないんですよ。この絵本は、彼が大活躍をするお話なのです。ある日……。
今から50年以上も前に誕生したこの絵本。確かに少しレトロな雰囲気。ところが消防署で働く彼らの姿は、いつ何度読んでも胸がドキドキしてしまうのです。正確な描写、迫力のあるスピード感、その上愛嬌まであって。でも、子どもたちが本当に夢中になってしまうのは、やっぱり小さなじぷたの雄姿なんですよね。胸がスカッとする1冊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
高いビルにはしごをのばして火を消すことのできる、はしご車ののっぽくん。たくさんの水で激しい炎も消すことのできる高圧車のばんぷくん。けが人を運んで助ける救急車のいちもくさん。大きくて立派な働きをするみんなは、いつも小さな消防自動車じぷたを「ちびっこ」あつかいしていました。でも、道がせまい山の中で火事がおこりました。このままでは山火事になってしまいます。そんなとき、出動を命じられたのはなんとじぷたでした。
30年ほど前に、兄と弟と夢中になって何回も何回も読んだもらった本です。小さなじぷたの大活躍は、「小さいけどなんだってできるよ」という子ども時代の自尊心を応援してくれるようなものでした。ぼんやりと、母をまん中に読んでもらった光景さえ思い出せる一冊です。いまは私がまん中になり、同じように三人の子どもたちに読み聞かせをしています。息子たちはドキドキしながら、物語のゆくえを追っています。きっと私たちも、こんな顔をしてじぷたの大冒険を応援していたんだろうなあと、読みながら実は考えています。 (ayukojapanさん 30代・ママ 男の子4歳、男の子3歳、男の子0歳)
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