あるところに一匹のちっちゃな“つる”がいて――おっと、まちがい“さる”がいて、名前をオズワルドといった。 ある朝、オズワルドはひなたに座って、あくびをし、体をかいた。それから、踊りをして、リンゴを食べて、世界一大きなリンゴの夢を見て、仲間とおしゃべりして……、ボスざるのいばりやと戦うことになる。小さなオズワルドは、どうやって大きないばりやと戦ったんだろう?
言葉遊びをしながら社会性のルールを諭す、一石二鳥のユニークなデンマークの絵本。各ページ「おっと、まちがい」を使用して、冒頭の“つる”と“さる”のように間違い遊びをします。「オズワルドは、ときどき“豆を煮る”――おっと、まちがい“夢を見る”」「さるたちは、“洗って投げた”――おっと、まちがい“笑って逃げた”」などなど、ページをめくるたび次はどんな遊びかなと気になってしまいます。「おっと、まちがい」のテンポもいいですね。 さて、中盤にボスざるのいばりやが登場します。さるたちは、みなこのボスざるに使われて嫌な思いをしていましたが、たまりかねたオズワルドの一言が仲間たちを団結させます。最後ページのリンゴパーティーで大好きなリンゴをかじるオズワルドは誇らしげ。小さく弱かったオズワルドの変身ぶりがさわやかな読後感を招く、勇気の出る一冊です。 ――(ブラウンあすか)
毎日を楽しくくらしていた森のさるたち。そこへいばりやのボスざるがやってきて、やりたい放題!オズワルドも最初はボスざるの言いなりに、りんごを運んだり、のみとりも。やがてある日、オズワルドは叫びます。「いやだ!」その叫び声は他のみんなにも広がっていきます。
最初はただ、オズワルドの生活を言葉遊びで表現する絵本なのかな…と思ったのですが、後半山場がありました。意地悪な威張りやのサルに、オズワルドが間接的に教えてあげるのです。威張り散らされ利用されるのはもう「いやだ」とオズワルドが一言言い切ったことで、他のサルたちも共感し一致団結。サルたちは威張りやの言うことを聞かなくなります。この行動により、威張りやのサルは集団生活の中でのルールを学ぶのでした。
それぞれページの冒頭文は言葉遊びのような誤りの言い換えで始まり、息子はこれにキャーキャー大喜び。たとえば、「威張りやがしりとりをするとき――おっと、まちがい、のみとりをするとき」とか「ほかのさるたちが大勢ふってきて――おっと、まちがい、やってきて」とか。次はどんな言い換えなのかな、と「おっと、まちがい」の後を待ち構えるように聞き入っていました。
初版が1947年のデンマークの絵本です。戦争直後ということで世界平和を祈りつつ、どこかの国を風刺して描いた作品なのかな…とも、ふと思えてしまいました。 (ムースさん 30代・ママ 男の子8歳、女の子3歳)
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