「ヤマメのピンク」シリーズ第3弾。 まず、シリーズを読み進めてこの絵本にたどりつくとびっくりするのは、ピンクの姿がすっかり変わっていること。 すっかり大人になり男っぽくなっているピンクは、子孫を残すという大事な仕事を果たすために過酷な試練へと立ち向かっていく様子が描かれています。
春に山奥の川で生まれたヤマメのピンク。次の年には海へとくだってぐんぐん大きくなり、サクラマスというサケになっています。そして、恋人のパールを連れてうまれた川へ帰ってきました。 ところが故郷の川はすっかり汚れ、おまけに2匹の行く手をはばんだのが大きなダム! 卵を産むためには、どうしても川の上流に行かなくてはならないのです。 「そんな ばかな」 「わたしたち、どうすればいいの?」 追い詰められた二匹は、それでも決意をするのです…。
人間の都合によって突然出来上がるダム。それがどれほど自然に大きな影響を与えるのか。 それでも村上さんは絵本の中に怒りをこめるわけではなく、それをも飛び越えてしまうほどの自然の強さを物語にしていきます。ピンクは、命をかけた決断をする前に、生まれ育ったふるさとを、ふるさとの仲間を思い返します。そこはやっぱり素晴らしくて愛おしい場所なのです。 圧巻は、ピンクとパールが高いダムを飛び越えていく場面。 ぐんぐん上に向かって登っていく2匹の様子に、読者も思わず手に汗を握ってしまいます。 桜の舞い散る美しい景色の中で読者が見たものは? 美しい見返しには、厳しい現実の中の希望の光も見え隠れしていますよ。 ブラティスラヴァ世界絵本原画展金牌受賞作品です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
●ブラティスラヴァ世界絵本原画展金牌受賞 大人になったヤマメのピンク。恋人のパールをつれ、海から故郷の川にもどってきたが、川はすっかり汚れ、おまけにダムが二匹の行く手をはばんでいた。どうしよう、卵を生むためには上流に行かなければ! 追いつめられた二匹はついに…?
大人になったヤマメのピンクは、恋人のパールを連れて、
卵を産むために生まれ故郷の川に戻っていくおはなし。
ピンクシリーズの第3弾。
村上康成さんは無類の釣り好きだけあって、
村上さんが描く魚や川の中の生き物たちは、
みないきいきしています。
村上さんの絵本には、生き物や自然に対するやさしさ、愛おしさを感じます。
ピンクとパールが帰ってきたふるさとは、
川が汚れ、大きなダムができていました。
それでも、子孫を残すために二匹は必死にダムを上ります。
あまりにも魚たちには、過酷な環境。
作者は、静かに私たちに語りかけます。
「これでいいのか?」
「みんな必死に生きているんだよ。」
もう少し、自然に優しくなろう。 (多夢さん 40代・ママ 女の子6歳)
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