1965年が初版のバーニンガムさんの作品です。
ガンピーさんシリーズとは、異なった画風も魅力的です。
イギリスで馬車が荷物を運んでいた頃のお話しです。
“馬車馬のように働く”とよく言いますが、馬のハンバートは鉄くず集めのファーキンさんと朝早くから働いています。
ファーキンさんが立ち寄る食堂の近くに、ビール工場の馬がたくさんいます。
彼らの優遇ぶりを自慢され、ハンバートのもらす言葉が印象的です。
〈世のなかって、ほんとうにふこうへいだ〉
社会の階級制度が、明確でシビアな時代の終焉前でしょうか、馬までもがこんな言葉をはいています。
方々を放浪し、様々な職を経験し、社会の貧しく決して華々しい光の当たることのない人々の生活を目にしたことのあるバーニンガムさんの鋭い視点だと思います。
しかし、ここに描かれている人々は、皆誇りを持ち力強く生きています。
ハンバートにとっては、またとない幸運が。
ハンバート自ら躍り出て手にします。
市長が伝統を重んじ、馬車でのパレードにこだわるところも面白い。
また、そのこだわりのためならば、たとえどのような荷車にでも乗ることを厭わない姿も、貧しい階層の人々にとっては嬉しい事だったのでしょう。
何せ、ロンドンの町は、あらゆる階層の人々で成り立っているのですから。
そのことを心得た良識ある立派な市長さんだと思います。
市長によって働く馬の願いである「休日」が作られ、ハンバートの老後も保障され終わっています。
まさに、労働馬のサクセスストーリーですね。
扉絵前の、献辞を読むと、日本版のタイトルがこのようになったのが理解できます。