茨木のり子さんに「水の星」という詩があります。(詩集『倚りかからず』収載)
その詩の一節に「いのちの豊穣を抱えながら/どこかさびしげな 水の星」とありますが、まさにその「いのちの豊穣」に呼応するように、この絵本で文章、それはまさに詩といってもいいですが、を綴った長田弘はこう書いています。
「ははのように いのちを つくり/ちのように からだを めぐり/たましいを ぬぐってくれる」と。
それは、水のことです。
茨木のり子さんが「水一滴もこぼさずに廻る」と驚いたこの星は、水にあふれた星なのです。
この絵本でまず驚くのは、荒井良二さんの絵だと思います。
表紙の一面の黄緑色。普通水を絵で描けと言われたら、水色を使うのに、荒井さんはそうではない。
黄緑色であっても、ああこれは水なのだと誰もが実感できる。
長田さんの文にこうあります。
「どんな いろお してないのに/どんな いろにでも なれるもの」。
そういえば、水は決して水色でもない。
透明であるけれども、いろんな色を持っている。
そこにも、豊穣を感じます。
宇宙に浮かぶ地球がこの絵本にも描かれています。
茨木のり子さんが見た「水の星」は、ちょうどこの荒井さんが描いた星のようであったにちがいない。
長田さんが思った水も、またそうであったにちがいない。
色んなことを考えてしまう、そんな絵本です。