【あらすじ】
つるばら村の床屋さんでの不思議なお客さんのお話。お店を切り盛りするのは、もうすぐ60歳になる山野このはさん。おとずれるお客さんとのやり取りの中で、このはさんは自然のいろいろな存在達と交流を深めていく。
心温まる短編、7話。
【感想】
お店を訪れる人が、いろんな職業や役割をもっているのが面白い。お客さんとやりとりしているうちにだんだんわかっていく事もあれば、最初から正体がわかっている事もある。お客さんを送り出してから、なんとなくその人のことが気になる。そんな風に少しずつ素敵なご縁をつないでいく、このはさんの気持ちが温かい。
7話がそれぞれ独立しているけども、どこかでゆるくつながっている。読み進めていくと、自分も村人の一員になって、このはさんたちの生活に参加しているような気分になっていく。「つるばら村シリーズ」の他の作品とのつながりもあり、あっちもこっちも読みたくなっていく。
おかげですっかりつるばら村のファンになりました。
どのお話も好きだけれど、この人の作品はあとがきも素敵。
実際に、通っている理容店での経験がもとになって、いろいろなお話が誕生したいきさつを知ると、更に物語が味わい深くなる。そういえば、自分も昔、理容店(床屋と言っていた)に通って、そこはおばさんが一人でやっているお店だった。床屋に行くと、普段とは違う匂いがあり、特別な体験(例えば、剃刀で顔の産毛を沿ってもらうとか)があり、けっこう楽しい。よく覚えているので、お話がよりリアルに感じられました。理容店に行ったことがない人は、ぜひ、一度は行ってみて、雰囲気を味わってほしいと思います。美容室とは違う、なんというか…言葉では説明できないものがあるのです。理容室で、この本を読んでみたいなあ。