これは小学校高学年向け以上かもしれません。
大人が読むと、なんだか若い頃の恋愛の失敗を思い出してほろ苦くなって、苦笑してしまうような、そんなお話です。
ラストの一文、こう書かれています。
『ダヤンはこころのそこからほっとして、おもわずわらいだしました。わらいながら、なみだがポロポロこぼれました。』
この心理描写を子供が読み取れたら、国語の読解力を鍛えるよい訓練になると思います。
引きこもって同居のダヤンに依存しきる暗いバクの嫉妬と絶望感と、バクがいると便利だけどその束縛と依存心に息苦しくなって遂に家に帰らなくなるダヤン…。
…この二人の感情は、まるっきり男女の同棲の成れの果ての状態と同じなんです(笑)。
そして遂に別れても、互いに相手の幸せを遠くから願い、存在しなくなった寂しさに少し切なくなる心境…。
男女に限らず、ダヤン達のような友達関係でも、同居してどちらかが極度に依存しだすと、確かにいずれこのような結末を迎えるのものだろうと思い、うなずいてしまいます。
イラストに関しては、割と初期の作品なんでしょうか、同作者のほかの作品に比べるとまだ荒削りですね。
絵本にしてはシュールなストーリーと、複雑な心理描写の興味深い一冊です。