きょう「は」泣き虫、と言えるのはこの虫集団がコミュニケーション能力に長けていたからに他ならないでしょう。
月の光を独り占めしていたときのクワガタは、自分は一人で生きていけると勘違いしていたに違いない。
こんな独りよがりものを普通はこんなに簡単に、世の中の人は許しません。
このあとずっと、きょう「も」泣き虫、が続いていしまうことの方が多い。この作品の展開は社会性が大事な人間にとって、これ以上ない、幸せな結末だと思います。
うちの娘は「こんなふうに独り占めしたら、だめなのにねー」と言いながらクワガタがえばっている様を眺めていました。
そして、普段は虫の絵を見るのも嫌がるのに、この作品だけは最後まで見ることができました。
きっと、この作者の独特の色彩センスと木版画の温かみが影響しているのでしょう。