『花さき山』で山姥が語るのが、『八郎』の八郎と、この三コ。
作者が人間の理想像として造形した主人公です。
不思議な名前です。
秋田平野に住む、三吉か三太か定かではない、ということで、「三コ」と呼ばれているのですね。
跡取りで無い次男坊、三男坊はオンチャと呼ばれ、生活のため仕事を探している時に、
三コに出会うのです。
実は三コも同じオンチャ。
すでに伝説化したような大男の三コが、
秋田県の太平山(たいへいざん)と思われるオイダラ山に植林を勧めるのですが、
ある日、山火事が起こるのです。
そのシーンは、五感が揺すぶられる迫力です。
その時、三コがとった行動が、理想像とされたゆえんです。
民話風の語りを用いた創作ですが、人々の営みを織り込んだ重厚な作品です。
地味な作品ですが、子どもたちに感じてほしい内容だと思います。