![みどころ](/images/shoukai_midokoro.gif)
モーリス・センダックの有名な絵本「OUTSIDE OVER THERE」、日本では脇明子さんが訳した『まどの そとの そのまたむこう』(福音館書店)として知られている本ですが、このたび、アーサー・ビナードさんの新訳で、新しい作品となって誕生しました。
表紙に描かれているのは、ひと目で目を引くほど、目の大きな、青い服を着た女の子と、同じく印象的な目の赤ん坊。 構図や2人の存在感に、どこか強い不思議な引力があります。
ページを開くと、岩が荒々しい、さびしい入り江。 「『いってらっしゃい……』 父さんは 海を わたる ふなのりです」 赤ん坊を抱いた少女と、女の人が、海に浮かぶ船を見送ります。
次へページをめくると、泣き叫ぶ赤ん坊を抱きしめる少女と、ぼんやり遠くを見つめる女。 「母さんは じっと とおくを 見つめながら 父さんの かえりを まちます」
冒頭から生きているように描き込まれた植物と、端にいる、布をすっぽりかぶって顔や体を隠す誰か。 これらは「だぶだぶふくのゴブリン」で、女の子のアイダの元から、妹である赤ん坊をさらっていってしまうのです。
全ページをとおして「父さん」は(せりふ以外)出てきませんが、「父さんがかえる日まで」の間、アイダがゴブリンたちから妹をとりもどそうとするおはなしが描かれます。
個人的な印象では、神話のような不思議さが色濃かった『まどの そとの そのまたむこう』と比べ、アーサー・ビナードさん訳の『父さんがかえる日まで』は、ずっと読みやすくなっているように感じます。 雰囲気も明るく、前の訳バージョンを「こわい」と感じる子がいたならば、より作品になじむ機会は広がるかもしれません。 でも、謎のあるこわさに魅力を感じる読者も存在することは間違いなく、センダックファンにとっては、あらためて絵本の魅力を問い直す新訳になりそうです。
ゴブリンたちに隠された妹を、アイダは見つけることができるのか。 妖精にさらわれる子がいるという昔話を、聞かされて育っていない日本人の私たちでも、さらわれそうな力を絵から感じます。 筆のタッチからセンダックの息づかいが伝わってくるような傑作絵本。 センダック自身が『かいじゅうたちのいるところ』『まよなかのだいどころ』とともに自らの3部作と呼んだ作品の1つで、全米図書賞受賞作です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
![父さんがかえる日まで](/images/4033286209_20190924150121_op1..jpg)
![父さんがかえる日まで](/images/4033286209_20190924150121_op2..jpg)
![出版社からの紹介](/images/shoukai_shuppansha.gif)
船乗りの父さんが航海に出たあと、母さんはその帰りを待ちわびるだけ。まだあかんぼうの妹は、姉さんのアイダが子守りをしなければなりません。ところが、よそ見をしていたすきに、その妹がゴブリンにさらわれてしまいました。アイダは母さんのレインコートをきて、ホルンをポケットに入れ、妹の救出に向かうのですが、窓を出るとき、うっかり後ろ向きに出たために、ふわふわふわのうわのそら≠さまようことになりました。
精緻に描き込まれた絵が読者を物語の奥へ奥へと誘う美しい傑作。 『かいじゅうたちのいるところ』『まよなかのだいどころ』とともに、作者自身が自らの3部作とよび、全米図書賞を受賞したモーリス・センダックの代表作。
人と人がむきあわない今の時代に、センダックから届いた美しい手紙 さあ、あなたは大切な人と見つめあって歩いていけますか?
![ベストレビュー](/images/shoukai_bestreview.gif)
『OUTSIDE OVER THERE』が原題。
脇明子さんの訳『まどのそとの そのまたむこう』で有名ですが、
日本語で詩作するアーサー・ビナードさんが新解釈で訳出しています。
思わず、原書を入手し、旧訳と合わせて読んでみました。
忠実に訳した脇明子さんバージョンもいいですが、
アーサービナードさんバージョンは一歩踏み込み、
わかりやすく補足した訳出です。
船乗りのパパが出かけている間、アイダは幼い妹のお守りをしていたのですが、
ちょっと目を離したすきに、ゴブリンにさらわれるのですね。
さあ、妹を取り返すアイダの冒険譚です。
ゴブリンというのは、ハリー・ポッター作品にも登場する有名な小鬼ですが、
ここでは変身した姿を披露していることもあり、日本の子どもたちにとっては認識が難しいかもしれません。
さらには、ゴブリンにさらわれるところから異界の世界が描かれており、
絵で読ませるところもナビゲートしてくれています。
うわのそら、という表現が印象的です。
題名は意訳ですが、
これは、パパからの手紙の新解釈だと思います。
だからこそ、題名に持ってきたのかもしれませんね。
原画も最新技術でクリアな印象です。
難解な作品ですが、アイダの活躍は、子どもたちにとってすがすがしいと思います。
小学生くらいからでしょうか。 (レイラさん 50代・ママ )
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