ときおり、どこからか風にのって美しい歌声がきこえてくる森の中の小さな村に、ノイという少年がすんでいた。あるときやってきた見しらぬ男に言われるまま、村人が〈金もうけの木〉を植えはじめてから、森は荒れ、ノイは母さんのための薬草をさがしに、いつもよりずっと遠くまでいかなければならなくなった。ある日ノイは、深い森の奥で、歌をうたいながら織物をおっている女を目にする。そして、その織物のすばらしさに目がくらみ、思わずそれをぬすんでしまった。 ラオスへの現地取材を重ね、田島征三が描く森の再生と愛の物語。ラオスのアーティスト、インシシェンマイのオブジェをコラージュした合作絵本。
ラオスの森の絵本作成ということで、ラオスのアーティストとタッグを組んだこの作品は、目が飛び出るくらいパワフルで、限りなくアートだと感じました。
人形やオブジェの迫力が半端ありません。
その作品群を田島さんは協調し合う形で、物語を展開していきます。
それは、生物多様性への思いと、自然環境保全を絶対テーマとする田島さんの真骨頂でしょう。
安易な開発によって、村の生活は苦しくなり、村を守る精霊たちは姿を消しました。
母子二人暮らしだったノイの母親も死んでしまいます。
その上精霊たちの怒りで、大洪水が起こります。
その洪水に巻き込まれたノイは、一人の少女を助けあげ、ともに昔の森を再生し始めるのですが。
予測できなかった展開の伏線は、ノイの犯した過ちのせいでしたね。
綺麗ごとではない泥臭い作品です。
物語の中で、オブジェたちがこちらを睨みつけているような、気迫がありました。
(ヒラP21さん 70代以上・その他の方 )
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