![出版社からの紹介](/images/shoukai_shuppansha.gif)
美月(みづき)と月明(あかり)、名前に月を宿すふたりの少女が出会うとき、湖底に沈んだ大口真神(おおくちのまかみ)の伝説がよみがえる。 野間児童文芸賞受賞作家 富安陽子の新境地!
養護施設で生まれ育った美月と、育ての親を亡くしたばかりの月明は、ある日、謎の富豪・津田節子の別荘に招待される。 津田は、条件をつけて、里子にする子どもを探していたという。
一、十四年前の、四月生まれの子どもであること。 一、両親および血縁者がひとりもいない、あるいは所在が不明であること。 一、出生場所、出生時の状況が不明であること。 一、ただし出生につながる手がかりを有していて、その手がかりはなんらかのかたちで月に関連していること。
いったい、何が目的なのか。 どうやら、十四年前に沈んだ村・弓月村と、大口真神を祀る夜神神社に、自分たちの出生の秘密と、津田の思惑を知る鍵が眠っているようなのだが……。
嗅覚がするどく、人の感情を読みとることのできる美少女の美月と、お調子者で、空間を移動する能力のある月明の凸凹コンビは、互いの力を合わせ、謎に迫っていく。
![ベストレビュー](/images/shoukai_bestreview.gif)
酒井駒子さんの幻想的な二人の少女の絵の表紙が印象的です。
『盆まねき』で小学生の女の子の不思議な体験を綴った作品のあと、
主人公を14歳の二人の中学生としたファンタジー。
とてもリアリティがあり、最初から提示される数々の謎が読み進めるごとに明かされ、
最後にジグゾーパズルの最後のピースが埋まる感覚で、一気に読んでしまいます。
養護施設で育った美月(みづき)は、ある日不思議な条件(月に関連するなど)で、
富豪の老女の別荘に招かれます。
同じようにして、月明(あかり)も招かれたのです。
その別荘で心を通じ合わせ、それぞれの不思議な力で、
二人は自分たちの、知られざる出生の秘密を知ることになります。
別荘の前のダム湖に沈んだと言われる弓月村のエピソード、
別荘に関わる人々の正体、裏山の祠・・・。
神社を中心に行われる神事をベースに、日本古来の信仰が描かれ、
日本人のDNAの琴線に触れる思いでした。
また、みづきが育ったのがキリスト教系の養護施設、あかりが育ったのが寺、と
日本らしい混沌とした宗教の狭間を見る思いでした。
特に土着信仰や神事については、作者のかなり深い造詣を感じました。
加えて、生死観や親子の愛情もたっぷり描かれ、とても奥深い余韻を感じました。 (レイラさん 40代・ママ 男の子19歳、男の子17歳)
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