![みどころ](/images/shoukai_midokoro.gif)
人が恋におちる瞬間って、本当に突然で、あまりにも何気なさすぎて、でもなんだか納得する。 そんな、古い友人の恋物語を目の前で話してもらっているような錯覚に陥ってしまう、素敵な少年と少女の出会いを描いた絵本を、作家の辻仁成さんが翻訳。星の瞬きのように一瞬で、超新星の爆発のように鮮やかな「少女との出会い」と別れ、そして運命的な再会を、少年のひとり語りという形で訥々と綴っています。
主人公は、宇宙飛行士になりたいという夢を持つ少年ヤコブ。でも、コンビニの経営者である父は、地に足をつけて生きるという信念があるため、ヤコブの夢を認めてくれません。母はヤコブ自身が幸せなことが大事なようですが、一方でこれ以上パパを苛つかせないようにとヤコブを諭し、「月のようにぼーっとしないこと!」と、妹たちの世話をしっかりするように言うのです。 消化できない気持ちを抱えたまま、ヤコブはいつものように妹たちを遊ばせに公園に行き、大好きな宇宙の本を読んでいました。すると本の隙間から、見たこともない綺麗な、赤いサンダルの足が見えたのです! その綺麗な足の女の子が、アイシャでした。
2人の恋を邪魔するものなんて、なんにもないように思うでしょう。
でもヤコブはユダヤ人。アイシャはイスラム教徒。ある夜、アイシャのヒジャブがヤコブの前で外れてしまい、運悪くその場をアイシャの父親に見つかった2人は、二度と会えなくなってしまいます。ヤコブにとって、アイシャに会えないことは、宇宙空間にひとりで放り出された宇宙飛行士の気分でした。 さて、いったい2人はどんな風に再会を果たすのか、それは絵本を読んだときのお楽しみです。
よく「キミは宇宙一キレイだ」なんてキザなせりふがありますが、宇宙と恋愛を結びつけた作品は、さまざまなジャンルに存在しています。しかし本書は宇宙を引き合いに出して愛を叫ぶのではなく、少年の心の中の宇宙を見せることで、少女への愛の大きさや深さを表現しているのが、なんともロマンチック。恋に憧れるお年頃の子どもにも、純粋な気持ちを思い出したいと思う大人にも、その甘やかな感覚がじんわりと染みるでしょう。
カナダ人のジャック・ゴールドスティンは、バンド・デシネ(フランス流コミック)の作家。水彩画のような淡い色調のイラストで、かわいらしいキャラクターと、物語の舞台である労働者階級地区の風景を繊細に描きだしています。特に、アイシャのヒジャブが外れた瞬間はファンタスティック! コミックの良さと絵本の語り口の見事な融合に脱帽です!
(中村美奈子 絵本ナビライター)
![出版社からの紹介](/images/shoukai_shuppansha.gif)
カナダ国内で最も権威のある児童文学賞「2020年TDカナダ児童文学賞」と「ケベック書店賞 - ユース部門」を受賞。 時間を超えても結びつきを忘れない人と人の心の強さと温かさ、それと同時に、現代社会が抱える様々な問題を、ジャン・ジャック・サンペを思わせるシャレた軽妙な画風で描き出した傑作絵本! <ミニ解説とオビ推薦>に宇宙飛行士の山崎直子さん。
<本書のあらすじ> 若いユダヤ人の少年とイスラム教徒の少女がモントリオールの労働者階級地区・マイルエンドの公園で出会います。彼らはお互いに星や星座に深い興味を持っていることを知り、いつの日か科学者や宇宙飛行士になることを夢見て語り合います。 けれど、二人が仲良くなることを親は許しません。親同士は喧嘩をし、女の子一家は引っ越してしまいます。 いつしか大人のなった少年は夢を叶えてNASAで働きますが、彼女のことを忘れられません。 そして、偶然、ある学会で再会します。
![ベストレビュー](/images/shoukai_bestreview.gif)
とても甘ずっぱい、彼と彼女の出会いと別れ、そして再開と愛の成就のお話です。
同じ夢を持ってであった二人は、家族の信仰上では対立する関係でした。
でも、それ以上に二人を結びつけるものがありました。
うっとりするようなお話でした。 (ヒラP21さん 70代以上・その他の方 )
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