高いビルがならぶ海辺の町のはずれに、そまつな小屋でひとりで暮らす少年がいました。 名前は、ロン。ロンは海で魚をとって暮らしていました。 蓄えの魚が底をつきかけ、どうしても魚が必要だったロンは、死んだ父の教えをやぶって嵐の海に舟をだします。 大波にのまれそうになりながら、ロンが必死でつり上げた「大物」、それは――ガイコツだったのです。
逃げるロンが、おそろしさのあまり気を失うと、ガイコツはそっとロンを小屋へ運びます。 やがて目をさましたロンは、震えるガイコツに自分の布団をかけ、火を焚き、ありったけの食料を差し出しました。 ロンのぶんの魚を食べ尽くし、最後のスープまで飲み干したガイコツの手は、いつしか人間の手に変わり……?
中国生まれのチェン・ジャンホンは、『ウェン王子とトラ』『この世でいちばんすばらしい馬』など感動的な絵本作品を世に送り出している作者。 水墨画の手法で描くダイナミックな絵がフランスなどでも高く評価されている注目の作家です。 ジャンホンの描く “目の表情”はすばらしく、ロンのおそろしさに見開かれた目や、わずかな食料を差し出すときのまなざしの緊張感には、思わず息をのむほどです。 ガイコツが立ち上がり動く迫力はすごいのですが、読み聞かせでは意外にも子どもたちはこわがらず、ただじっと見入っていました。 ガイコツの姿にはこわさと同時にあわれさがあり、子どもたちは自分をロンに重ねあわせて読んでいたようです。
孤独なロンとガイコツが互いを受け入れる場面は心に迫ります。 百聞は一見に如かず。ぜひ一度ご覧になっていただきたい絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
ひとり、魚をとってくらす少年ロンは、どうしても今日の獲物が必要だったので、死んだお父さんの言いつけをやぶり、嵐の海に舟を出しました。すぐに、つり糸がぐいぐい引っぱられますが、大きなうずに飲み込まれそうになった直後、ロンがつり上げたのは、ガイコツでした。家にまでついてきたガイコツが、食べ物をほしがるので、ありったけの食料をやると…? 父をなくした少年と、息子をなくした漁師の出会いを描く、ドイツ児童図書賞作家の大型絵本。
今までのチェン・ジャンホンの絵本からすると、現代的なお話ですが、迫力は全く変わりません。
海から現れたガイコツの存在感と迫力は満点。
それに子どもを失った父親のガイコツだとわかって、少年の境遇と重なり合って悲哀も加わりました。
ガイコツが人間の姿に変わるところについては、映画シーンのようで圧倒されてしまいました。
二人はこのまま幸せに暮らしていくのでしょうね。 (ヒラP21さん 60代・パパ )
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