ツチハンミョウは、「道教え」として知られる美麗な「ハンミョウ」と異なり、地味で目立たない控えめな虫です。その繁殖方法は独特で、4000個の卵から生まれる体長1ミリにも満たない小さな幼虫は、寄生先となるハチの巣にたどりつくため、いろいろな虫にとりついていきます。わずか4日という寿命の中、種の存続のために決死の旅をする幼虫たちの道程を、緻密かつ力強いタッチで描きます。 物語の最後では、ようやくたどり着いた巣の中で対峙する、2匹の幼虫たちが描かれます。そのすがたは、わたしたちにいのちのあり方について考えさせます。 ツチハンミョウについては『ファーブル昆虫記』にも記述がありますが、この本の主人公で日本固有種のヒメツチハンミョウについては、あまり知られていませんでした。著者の舘野さんは、その生態を解明すべく、8年にも及ぶ生態調査を行ない、その一部を明らかにしました。巻末の解説では、その調査のようすや、生態のくわしいようすを、臨場感のある写真を交えながら紹介します。
衝撃のデビュー作『しでむし』や『ぎふちょう』などのうつくしい細密画で知られる、著者渾身の新作絵本。
”つちはんみょう”という虫が、子孫を残し種として生き続けるための方法が、すごいです。
こんなシステムを、だれが考えたのだろう?
私たち人間が住むのと同じ世界で、小さな虫の世界では、こんな死闘が繰り返されていると思うと、自然界の不思議を感じ、自分の知る世界が、本当に限られた一部分でしかないのだと、思い知らされます。
まだ分からないこともあるようですが、これを8年もかけて、調べた作者もすごいですし、この絵にしたこともすごいです。
何度も文章を読んで、細部の絵を凝視して、発見する楽しみもあります。
小さいけれどダイナミックな虫たちの世界…おすすめです。 (ピンピンさん 50代・その他の方 )
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