この絵本は、文も絵も安野さんが書きました。三人の数学者と相談して絵本を創るのも面白く楽しいのですが、ひとりで創るのもいいもんです。いちばんいいのは、安野さん一人なら、そんなに難しくならない点です。
編者など、何もしないで寝て暮らしていました。ときどき安野さんに「どこまでできました?」と聞きます。「まだまだ」「それなら、もうひとねむり」とのんびりくり返しているうち、安野さんは、ほんとうに一人で絵本を創ってしまいました。
これが美しい数学(7)で、このシリーズ最後の作品です。こんなふうに始ります。
むかし あるところに なまけものの男が住んでいました。そこへ仙人がでてきて、「ふしぎなタネをあげよう。そのタネを一個焼いて食べれば一年間は何も 食べなくても おなかが空くことはない。また、このタネを一個、地面にうめておくと来年の秋には、かならず実って 2個になる。」と言ってふしぎな種を2 個くれました。 怠け者の男は何年かたって、ふと、2個とも地面にうめたら、と考えました。次の年に2個のタネは4個にふえ、1個を食べて3個を埋めました。
自然の摂理は順序正しく整然としています。人間の暮らしもその摂理に従っています。当たり前のことですが、その当たり前のことが、よく考えてみると、不思議ですね。
安野光雅さんの絵本が好きで、こちらでのレビューを参考に本を探していたところ、この絵本をみつけました。
タイトルの「ふしぎなたね」とは、仙人がある男にくれた2つのタネ。
1個食べると1年間おなかが空かない、1個地面に埋めると翌年の秋には新たなタネが2個実る、というものなんです。
もらった男は、数年間は律儀に1個食べて1個埋める、、、を繰り返していたのですが、あるときふと、2個とも埋めると翌年には4つに増えることに気づきます。
さぁ、ここからが数学の世界です(笑)。
4つに増えたタネ、1個食べて3個埋める→6個実る。
6個のうち1個食べて5個埋める→いくつになる?
これがどんどん繰り返されていきます。
そのうち家族が増えて食べる数が増えたり、知人にふるまったり、貯蔵したりして計算が複雑になっていきます。
ストーリーを追いながらついつい計算したくなります。
息子もまだよく掛け算がわからないながらも、指を折りながら一生懸命数えていました。
でもこの本は、算数だけじゃないんです。
ラスト近くで、主人公にはアクシデントが待っています。
それを乗り越えて、また始まる新たな暮らし。
この社会の縮図かな、なんて思わせられました。 (あんれいさん 30代・ママ 男の子5歳)
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