つめたい風の吹くクリスマスの夜。どの家にもあたたかい灯りが灯され、通りを歩いている人はみな、家路を急いでいます。その中でただ一人、住む家もなく歩いている老人がいました。その後を追うようについて行くのは、一匹の小さな白い犬。老人は犬に気づき、パンを分け与えます。そして、クリスマスの夜だったので、自分のよく知っている物語をいくつか聞かせ、静かに歌いました。白い犬はその後、自分が魔法使いであることを告げ、親切にしてくれたお礼に願いをかなえてあげようと言いました。
フランスの歌手ドミニク・マルシャンが作った歌を絵本化した作品。1972年に歌物語として発表され、多くの人々から絶賛を浴びました。歌に登場するリトンという人物は、かつて、犬のショピンをつれて南フランスを放浪し、寒い夜にマルシャンのもとに身を寄せたことがあったといいます。マルシャンは1989年に37歳の若さで他界しましたが、作品は彼の歌を再び世に出したいと願う人々によって絵本としてよみがえりました。イラストは淡いやさしげな色鉛筆画。寒いけれどふんわりとした魔法のような一夜を描きます。 一人の老人が願ったことは、家を持つことでもなく、お金持ちになることでもなく、人間としてとても必要なことでした。マルシャンが20歳の若さでこの歌を発表したことは驚きです。その歌声も絵本と共に味わってみたいものです。 ――(ブラウンあすか)
家もない1人の老人と、小さな白い犬の出会い。 それは、特別な夜のおとぎ話。 住む家もない老人についてくる子犬。パンを分け合い話をきかせていると、その子犬は魔法使いであることを告げます。老人が願ったことは……。
話を読んでうなり、絵を見てうなり、エピソードを知ってうなり…、この話に関わる物すべてが付け入る隙なく、私を圧倒する作品です。
話:
家のない老人と犬の出会い。犬は魔法使いで、老人の望みをかなえようと話すのだけど、老人の答えが素晴らしい。
物欲から離れた浄化された心とでもいうのでしょうか、誰にでもいえることではないのでそれだけで感銘しました。
さらに、犬は自分が魔法使いであることを捨てて犬になりきる。
これ以上の友情はないでしょう。
究極の愛だと思いました。
絵:
色鉛筆で一見雑に描かれたような絵。
しかし、この絵が話の情景にピタリとはまっているのです。
吹雪の情景、老人の心象風景、老人と犬の心の交流…。
はっきりと表現するのではなく、色鉛筆の線で全てを表現した上で、情景や心を本に溶け込ませています。
究極の表現だと思いました。
エピソード:
実在したというモデルがいること、歌手のドミニク・マルシャンが20歳で物語を歌にしたこと、ドミニクが37歳の若さで亡くなったこと…。
そのどれもが、この話に神々しさを与えています。
20歳とは思えない感性で、ドミニクは早世したという事実からこの作品をとても高いところまで持ち上げてしまいました。
この崇高にして感動的な絵本は、どの年齢層からも受け入れられることと思います。 (ヒラP21さん 50代・パパ 男の子14歳)
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