折り鶴は、病気平癒やスポーツの試合での勝利など、昔からさまざまな願いをこめて折られてきましたが、平和を願い、祈る象徴として折られるようになったのはそう古いことではありません。
戦争が終わって10年たった昭和30年、原爆症のため広島の少女、佐々木禎子が亡くなり、その悲しみの中で級友たちは原爆で亡くなった子供たちの慰霊碑「原爆の子の像」をつくります。その慰霊碑は、回復を願って折り鶴を折りつづけた禎子をイメージし、大きな折り鶴を頭上に高く掲げた少女の像だったのです。折り鶴が平和祈願の意味をこめて折られるようになったのは、禎子と「原爆の子の像」がきっかけといっていいでしょう。そして、その折り鶴は今、平和運動の波にのって世界で折られるようになりました。
この絵本は、禎子の死と折り鶴が世界に広まっていった過程を、絵と文でわかりやすく描いたものです。作家、画家の平和への祈りが伝わってくる感動の絵本です。
先に佐々木禎子を描いた長編の絵本を読んだためか、この絵本では、中盤に禎子の死があって、ちょっと意外感をもちました。
うみのしほさんの描きたかったのは、禎子の折り鶴が継承した、平和への活動の話に重きがあったようです。
国内だけではなく、モンゴル、アメリカと折り鶴の話は世界に広がります。
それはそれで素晴らしいことですが、禎子の生涯と話があっさりとし過ぎてしまったようで残念です。
後半部分は、解説にでもして、話を分けた方が良かったのではないかと思います。 (ヒラP21さん 60代・パパ )
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