「欲が出ました」 みんなの声

あとがきに「この本はさびしい中年男性の独白」との文言が出てきました。
こんなにウイットに富んで、頭の内部も飛んでいる独白ならいくらでも読んでいられる、そんなエッセイです。

ふと、この人は「愚痴」というものが存在するのだろうか、と思いました。もちろん、生きているんだから愚痴りたいことは山ほどあるでしょうけど、この人の場合は愚痴こそそのまま口に出さない、出すならひと加工する、というのが流儀のようだと思えてなりません。
なんて楽しい生き方なのだろう。
これこそが「考える」ということの最大のメリットだろうなと読んでいて思いました。

ちょっと欲を出してしまったばかりに失敗しちゃった経験は誰もがあるのではないでしょうか。
「ここでやめておけばよかった」「しなければよかった」と。
ヨシタケシンスケさんの絵本は面白い中にも共感できることが多くて、笑いながら救われながら読めます。

どうでも良いようなことに対するヨシタケシンスケさんのすごい拘りが、ヨシタケ作品の原点である事を再認識する本です。
ささやかな欲というのは、その事を意識しないと生まれないものでしょう。
小さなこだわりをせっせと書き貯めているヨシタケさんの、どちらかというと引っ込み思案に魅力を感じるなんて、不思議な作家です。