とても哀愁のある物語です。
山奥の村で母を亡くした貧しいかよと、火の気を求めて駆け回る火くいばあの心の通いあいが、切なく響いてきました。
山火事で娘を失ない、火くいばあとなってしまった母親と、かよとの共通項は共に知っていた「ひっこしおばあのうた」という数え歌。
お話のキーになっていますが、文中では二番から九番まで飛んでしまいました。
間はどんな歌詞だったのでしょうね。
赤いお椀は火の象徴のようです。
最後に火くいばあは優しい顔でお椀の中に消えていきます。
「くわひょうくわひょう」という風のイメージも素晴らしいと思いました。
語り口調の素晴らしさもさることながら、福田庄助さんの絵にも哀愁たっぷりです。
次第に姿を明らかにしていく火くいばあを、一見がさつに見える絵の中に、風のようにして描いていました。