2005年のコルデコット賞オナー賞受賞作品。
作家のモー・ウィレムズは、2004年度に絵本のデビュー作の「はとに うんてん させないで」でもコルデコット賞オナー賞を受賞していて2年連続受賞という快挙を達成しています。
モー・ウィレムズの経歴を見ると、セサミ・ストリートの脚本・アニメーションとして活躍とあり、このセンス抜群の作風に繋がっているのでしょう。
何と言っても、セピア色の写真を背景にして、人物と小物をコミカルな絵で融合させるという手法が面白い作品です。
この手の作品は、何処か違和感があるのが常なのですが、微塵の違和感もなく実に自然なもの。
そして、コミカルな絵は、非常に粗く描いているのですが、その人物の特徴を上手くとらえています。
最初のページでは、パパのママ結婚からトリクシーの生誕までが描かれているのですが、シンプルな絵ながら時間の経過が伝わってきます。
物語は、パパとトリクシーが、仲良くコインランドリーに行くシーンから始まります。
トリクシーは大好きなくたくたうさぎの人形を抱え、まだ言葉を発することができないという設定なので、パパとトリクシーは目で会話しています。
帰路の途中、トリクシーは、くたくたうさぎがいないことに気付き、パパに訴えるのですが、パパは気付きません。
言いたいことが伝わらないもどかしさ、悔しさを、その表情が上手く表現しています。
かんしゃくを起こした時の表情は、オーバーアクションではありますが、実に特徴をとらえていると思います。
センスだけでなく、一瞬の表情の動きを克明に表現するモー・ウィレムズの観察力に脱帽です。
最後のオチも納得できるもので、読み聞かせし易い作品だと思います。