学校で仲間外れにされ、悪意ある視線や悪口にずっとさらされているエレーヌは5年生の女の子。学校に居場所はなく、心はとても傷ついています。そんな彼女を唯一救ってくれるのは、今読んでいる本『ジェーン・エア』。本の世界にいる時だけ、エレーヌの心は穏やかなのです。
そんなエレーヌですが、嫌々参加した学校の合宿がきっかけで友達ができます。それまでモノトーンで描かれていた彼女の世界は、色づいていきます。そして、悲しげな顔は笑顔に変わり、丸まっていた背中はピンと伸びていきます。
自信を持ち始めると、エレーヌは、人の悪口に自分自身が染まってしまっていたこと、気にしなければ悪口は悪口でなくなっていくということに、気がついていきました。下校時、いじめっ子と、バイバイと手を振り合う場面は大変印象的です。
思春期の女の子の気持ちやその変化が、コマ割りの絵で、読み手の心に迫るように描かれています。仲間外れにされている場面では心が痛くなりますが、同時に描かれている『ジェーン・エア』の揺るぎない物語世界の存在には、エレーヌと一緒にほっとする思いでした。
合宿でエレーヌはキツネと遭遇します。タイトルにも上げられ、表紙の絵にもあり、かつ最後のページでも印象深く描かれているので、この本では、このキツネが大きな意味を持っていると思うのですが、このキツネに託した作者の思いがよくわかりません。自分から他者に心を開いた、第一歩ということかな?実は、読後、少し もやもやとしています。でも、人間関係に悩みを持っている思春期の女の子に「読んでみて」と薦めてみたい本です。