ほんとに、もう、エッツの作品にはしてやられる。そんな言い方をしてはいけないのだろうけれど、ほんとうにいつも、物語の終わりは、いいしれぬ幸福感に全身が包まれるのを感じるのである。
あさひがのぼって、はらっぱへあそびにいった“わたし”。ばったさんやかえるさん、りすさんやかけすさんと遊ぼうと、近寄っていくのですが、動物たちは次から次へとそっぽを向いて行ってしまいます。誰も遊んでくれないので、“わたし”は池のそばの石に、音をたてずにこしかけていました。すると・・・。
「もりのなか」でもそうであるように、エッツの、自然に対するまなざしには感嘆させられる。自然の持つ神秘の力、厳しさ、やさしさを、ここまで深く感受している絵本作家は、そういないんじゃないかと思える。
巻末にあるプロフィールを読んでみると、「アメリカのウィスコンシン州の小さな町に生まれ、動物たちと親しんだ幼時は、のちのエッツに、決定的な影響を与えた」と書いてある。
そうか。やっぱり、幼い時の原体験って、大切なのだと痛感した。と同時に、娘に読み聞かせをしてみたのだが、「もりのなか」ほどの感動はなかったようである。ライオンさんやゾウさん、といった動物は、本やメディアでたくさん触れているから馴染みがあって、バッタやカメ、カケスなんかは、娘にとって未知なものだったなんて。
親としては子育ての仕方に疑問を感じてしまった。だからといって、都市計画された街に住んでいる娘を毎日、自然のなかへ連れ出すには無理がある。そうなると、親が身近な自然のなかで、なるべく目線を自然に合わせるようにしなくてはいけないのかもしれない。
そんなことを考えさせてくれる、親にとって大切な“自然の書”でもあった。追記になるが、訳がとても美しく、詩的な雰囲気になっていて、声に出して読まずにはいられない。