はらっぱへ遊びに行った女の子は、「ばったさん、あそびましょ」と、草の葉にとまっていたバッタを捕まえようとしますが、逃げてしまいます。 カエルも、カメも、リスも、かけすも、ウサギも、ヘビも、みんな捕まえようとすると逃げてしまいます。 誰も遊んでくれないので、池のそばの石に腰掛けてじっとしていました。 すると、バッタが戻ってきて、草の葉にとまります。 カエルも戻ってきて、草むらにしゃがみます。カメも、リスも・・・みんなもどってきました。誰も、もう怖がって逃げたりはしません。 シカの赤ちゃんがやってきて、少女のほっぺたをなめます。
ぽかぽかと暖かい日差しの中で、女の子と動物たちとのやりとりを描いています。 描写が細やかで、女の子の心情の変化が読み手にも伝わってきます。 クリーム色を基調とした色使いと柔らかなタッチの挿絵で、とても穏やかな気持ちになります。 また、うしろでずっと笑顔の太陽が見守っているのも、大事なポイントかもしれません。 最後の女の子の言葉がとても印象的です。 「ああ わたしは いま、とっても うれしいの。とびきり うれしいの。」 「なぜって、みんなが みんなが わたしとあそんでくれるんですもの。」
日常に疲れたとき、ゆっくりとこの絵本を開いてみてください。
この作品が気に入った方は、同じくマリー・ホール・エッツの名作「もりのなか」「またもりへ」(以上福音館書店)をぜひ読んでみてください。
(金柿秀幸 絵本ナビ事務局長)
野原にとびだした女の子と、バッタやカエルなどの小さな動物との交流を、このうえなくあたたかくうたいあげた絵本。生きとし生けるものが共感しあえる世界を、静かに語りかけています。
マリー・ホール・エッツは、1895年アメリカ ウィスコンシン州生まれ。
1984年没。
1944年の作品で日本では1963年に訳された「もりのなか」で、つとに知られています。
「もりのなか」は、モノクロームの世界でしたが、他の作品も一色を基調としたものが多く、今回の作品は、クリーム色が基調となっています。
物語は、主人公の女の子が、原っぱに遊びに行くシーンから始まります。
ばったがいたので遊ぼうと思ったのに、逃げてしまいます。
次は、かえる、やはり逃げてしまいます。
そんなやり取りの繰り返しが続きます。
女の子は、仕方ないので池の辺の岩に腰掛けてじっとしていると、さっき逃げていった動物達が寄って来るのです。
その時、女の子は、目で動物達を追い駆けます。
決して動かず、目だけを動かしているのでなかなか気付かないかも知れませんが、その微妙な動きが秀逸。
最後に、動物達と女の子が一緒の空間にいるのを見ると、何とも言えない穏やかな気持ちになることでしょう。
追いかけると逃げるけれど、じっとしてると寄って来るという野生動物達の習性は、まさに真実。
マリー・ホール・エッツの幼少期に動物達と親しんだ実体験が、この作品の原点なので、なおさら真実味を帯びて語りかけていきます。
優しい絵に加え、後ろから覗いている太陽も良い味を醸し出していて、安心して読み聞かせできる古典的作品としてオススメします。 (ジュンイチさん 40代・パパ 男の子12歳、男の子6歳)
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