【内容】
ある夕方、道化の恰好をした人が映画を上映していた。少年二人は、興味をもって後をつけていく。神社に辿り着くと、黒い覆面の男たちに少年達は連れ去られてしまう。その先には魔法博士という悪者たちの親玉がいて、名探偵の明智小五郎を「盗む」と豪語しているが…
少年探偵団たちと、魔法博士一味の戦いが、世界的な宝物の予告窃盗と誘拐事件のなかで繰り広げられる。
初出:「少年」(光文社発行、雑誌) 昭和31年(1956年)1月号〜12月号まで連載
挿絵:佐竹美保 作:江戸川乱歩
【感想】
戦争後、10年くらいたってからの渋谷区周辺あたりが舞台の、少年探偵もの。少年探偵シリーズ第14作目なので、過去の事件も持ち出して話が進んでいくのだが、この1冊だけでも十分に楽しめるように工夫されている。
毎度このシリーズを読むと思うが、探偵ものが苦手な私でも、最後まで興味をもって、話のスジを見失うことなく楽しめるようにしてあるのがありがたい。例えば、少年たちが拉致された泥棒の隠れ家では、この世のものとは思われないようなすごい仕掛が待ち受けている。ネタバレにならないように紹介するのが難しいのだが、巨大な人形の体内を通るという、想像力がたくましいと相当グロテスクでドキドキしちゃうような出来事もあり、虎や人形が自由に意思をもって動きまわる。子どもがバラバラに殺されてから、魔法のように復活したり、殺した人が反省して殺した子どもと仲直りしたり…外国の手品を見ているような、サーカスのような妙な事件が次々に起こり、飽きない。
昭和30年代の、レトロ感たっぷりの、不思議なサスペンス。子どもよりも、大人の方が夢中になるかも。