【内容】
靴下のしろ君は、洗濯して干されていたら、風に飛ばされてしまった。
ひとりぼっちになってしまたしろ君は、パートナーのもとに帰るため、あちこちを訪ね歩く旅にでる。
【感想】
パートナーを探す旅、人生の目標を探す旅である。こんな壮大なテーマを、こんなにわかりやすく描いた作家が他に居ようか。一種の冒険物語であると、私は思った。自分に欠けているもの(相方)を捜し、旅に出る靴下、しろ君。いろんな靴下にであい、いろんな経験をして、最終的には納まるべきところに納まる(収まる?)旅の中で、しろ君は、様々な出会いを経験し、自分の小さな殻を打ち破り、どんどん成長していく(ように見える)。世界は、自分が思っていたような範囲は、とっくに超えていた。奇想天外な現実を知り、いろいろな生き方を知り、彼はずんずん大物になっていく(ような気がした)が、最終的には、普通の人生に終わってしまう。
このオチ、私は個人的に好きではない。
旅の過程が普通ではなさ過ぎて、どんなアメーズィングなファンタスティック人生がまっているかと、期待していただけに、ガッカリだ。例えるなら、神童と呼ばれていた近所の少年少女が、普通のサラリーマンになったと聞いたくらいの、落胆ぶりだ。
しかし、人生とは、そういうものなのかもしれない。
私は、子どもの頃から変な人だったという世界の偉人たちの物語を期待してしまうが、一般の人にそれを強要することは無理だ。愚かなことだ。
普通が一番いいのだ。今日も明日も明後日も、平平凡凡に生計が成り立っていく生活。死ぬ間際にも、あまり思い出が思い出せないような、人生。
そんな風に、無難に安全に生きるのも、また素晴らしい人生だと、思い込もうではないか!(と、自分に言い聞かせる)