レモンちゃんの無垢なキャラクターと、それを品種差別的な言葉で除け者にする
果物と野菜たち。
昨今の低年齢化するいじめの現実を、とても可愛らしいファンシーな絵柄で描かれています。
主人公(レモンちゃん)が果物でも野菜でもなく‘薬味’に受け入れられることにより、
自分の存在意義や自信を見出し、かつて自分をいじめた皆の前に正義の味方となり登場する。
そしてヒーローとなり仲間達と共に、いじめっ子達の窮地を助ける。
これを機に、いじめっ子たちも主人公を認め、謝罪し、和が起こる。
おそらく幼児〜低学年向けの作品だと思われますが、根底にあるテーマと絵柄の対比
そしてストーリー展開が本当にお見事!
他の方のレビューにもありますが、背景のお花や昆虫たちも凝って描かれていますし、
一見女の子向けの絵柄ではあるものの、男の子も大喜びする戦隊ヒーロー設定もあり。
「お花が●●だ!」「蝶々は●●になってるよ!」等と和気藹々とした探しっこゲームもでき、
息子にも、小学校低学年を対象とした読み聞かせ活動でも、大好評。
ちゃんと「意地悪してひどい」「レモンちゃんかわいそう」というような、
しっかりした理解による反応も得られました。
笑いもあり、尚且ついじめっ子にとっては自戒するであろう場面も。
身近な子供たちの暴力性や陰湿さは、近年叫ばれる発達障害以上に、
愛情不足から来る愛着障害や人格障害的な側面が目立つように日々感じています。
そんな中で、僅かでも何か‘良い引っ掛かり’を残してくれそうな貴重な絵本です。
秀逸だなと感じたのは最後のページでの謝罪。
元いじめっ子たちが「●●だから意地悪をしてしまった」という本音まで吐露し、
判り易く主人公の尊厳に触れています。
いじめや差別に対して気付きを与える。
楽しませ、笑いも促す。
作家さんのお人柄か、良い意味で計算し尽しておられるのか。
これ以上ないバランスの絵本ではないでしょうか。
多くの用途と意図に対応できる作品。
★10個つけたいくらいです。