砂漠に憧れます。
それはまだ見ぬものへの憧れ、だと思います(岩系の砂漠は見たけれ
ど、砂砂した砂漠は見たことがないから。鳥取砂丘でさえ行ったこと
がないのです)。
夫は反対で。砂漠に行ったことがあり、その上でまた想いを募らせて
いるようです。「なんかさ、非日常という感じがするんだよ」と。
この本は「バルコ・デ・バポール児童文学賞」受賞作です。というこ
とは対象は児童だと思うのですが、そうであるにもかかわらず、大人
だって十分楽しむことができるファンタジーのように思えました。
歴史ロマン、みたいなものを感じます。
たとえば司馬遼太郎の本とか、三国志みたいなものを読んでいるよう
な気分。まるで本当にあったことみたい。
そう思っていたら「キンダ王国」というのはアラビア半島にかつて実
在した王国だったのね。前イスラーム時代に存在した詩人もモデルに
なっているし。もちろん、物語自体はフィクションなのだけれども。
物語がおもしろいだけでなく、ひきこまずにはいられないモチーフも
たくさんちりばめられています。カスィーダ(長詩)やラーウィー
(詠い手)が登場する詩のコンクール。過去も現在も、そして未来を
も、すべてを織り込んだ絨毯。
自分が歩んできた道も。これから歩んで行く道も。
いくつもの選択肢があって、どうとでも生きていかれる。
違った。しまった。
そう思ったらまた新たな道を選んで生きていけばいい。
王子の最後の選択があまりに気高くて、この本の素晴らしさを夫に説
明している時に涙が出そうになってしまいました。