天才長谷川集平の代表作。高校生の頃からずっと好きな作品です。
弱っちい友だち。情けなくて、口ばかりで、すぐ泣いてしまう…ちょっと可哀想だなあと思うから仲間にも入れてやるんだけど、結局自分が損な役回りになってしまう…
「ああ…イヤやあ〜せやから長谷川くんきらいや」
という主人公の気持ち、いたいほど分かります。
繰り返される「はせがわくん きらいや」の言葉。
繰り返されるからこそ、ただ本当に嫌いなだけではないような、だからといって大好きなわけじゃない…
そういうこどもたちの本当に日々実感している気持ちが、まっすぐ描かれています。
この本を苦手だとおもう人がいるのは、そういう「み〜んなお友達」という本じゃない、結構ドロドロとしたこどもの正直さをあぶりだしているからじゃないかな?
この本が、版を重ねるのは、森永ヒ素ミルクに関わる本だからという単純な理由ではなく、そういうこどもの本当の気持ちが描かれた秀作だからだと思います。
(かつて森永の赤ちゃん用のミルク製造過程でヒ素が混入してしまい、それを飲んだ赤ちゃん達に甚大な被害が出た実際の事件がありました。今も沢山の方々が後遺症に苦しんでおられます。各県の被害者の会は現在も専従をおいて活動するほどの被害だったのです。カネミ油症、イタイイタイ病と並ぶ戦後最大の公害被害です。)
そんな背景をもった作品ですが、こどもたちにそんなこと関係ありません。メッセージは作品がちゃ〜んと伝えてくれます。それだけの力のある作品なのです。