詩人エミリー・ディキンソンと少女の思いがけない出会いの日を、美しく格調高い絵で描いた絵本。
気品にあふれ、清楚で伝統的な米国ニューイングランド地方の気風の伝わってくる作品です。歴史伝記絵本として米国では高く評価されています。
ディキンソンを知る絵本として秀逸。クーニーは現代米国を代表する絵本作家(画家)の一人でしたが、日常的に現代の子供に親しい絵本作品はあまり残していません。子供が主人公の絵本もあるけれど、これもまた古い時代が背景となるもので、子供の通った(通う)プレスクールなどではあまり身近に目にはしませんでした。
マイノリティー米国在住者としてわたし自身、この「古い時代」というのが苦手です。つまり、公民権運動だってまだ起きていないし、絵本の中にも階級制度が色濃く表れているわけであって……。100年ぐらい前のことだと、自分とつなげて考えてしまいますね。だから、どうしても多様性を謳う絵本に魅せられる傾向があります。時代を考慮すれば、普遍性はもちろん彼女の絵本にも存在するわけですが。
でも、クーニーのイラストは本当に気高く、上品で美しい。米国のこの時代のニューイングランド地方を知る、ディキンソンを知るという意味でおすすめします。最後にディキンソン直筆の詩が掲載されています。