幻想的、芸術的でお話の山を追うよりは、その世界に浸る作品……という理由から大人に受ける絵本という印象がありましたが、二人の子どもと楽しみ、充実感が味わえました。霧の夜、野いちごのはちみつ煮を手に、友だちのこぐまくんを訪ねるはりねずみのお話です。途中、いろいろなものに遭遇しますが、そのひとつひとつが静謐の中で語られ、しっとり繊細な感性の世界を築き上げています。
登場する動物のひとつ白馬について娘は、「きっと、(はりねずみは)夢を見ていたんだよ」とのこと。息子は、「小さな動物の視点で描かれるお話だから、白馬は本物だと思うな」でした。娘には、巨大なみみずくの姿も印象的だったようです。
笑って楽しめる絵本もいいですが、こういう静かな気持ちに浸れる絵本もいいですね。二人の子どもの間で、わたしの心も霧の森にたたずんでいました。